2019年10月14日月曜日

注意バイアス修正訓練のRCTにおけるベースラインのバイアスのメタ分析:臨床的な不安とPTSDにおける脅威に対するドットプローブバイアスの無証明

Kruijt, A. W., Parsons, S., & Fox, E. (2019). A meta-analysis of bias at baseline in RCTs of attention bias modification: no evidence for dot-probe bias towards threat in clinical anxiety and PTSD. Journal of abnormal psychology128(6), 563.


背景:脅威に向けられる注意の減少を通した治療効果を理論的基盤に置く不安症の治療のためのABMの開発には、膨大なコストがかけられている。しかし、臨床的不安症が脅威に関連づけられたバイアスによって特徴づけられるというメタ分析によるエビデンスは薄い。337名の不安症者のドットプローブ課題のデータはこれまで最大のメタ分析に含められている。しかしABMのRCTのベースラインで得られた注意バイアスのデータはこれまでメタ分析されていない
方法:13個のABMのRCT研究に参加した不安症患者1005名のベースラインの脅威と関連したドットプローブ課題の指標をメタ分析に投入した。
結果:ランダム効果メタ分析は平均バイアスがゼロとは異なるという証拠を示さなかった。追加のベイズファクター分析もまたバイアスがゼロであるという仮説を支持した。一方、インターバルに基づいた分析は臨床的不安症の平均バイアスは0msから5msであることが示された。
考察:本研究の知見は、サンプル数の多さと発行バイアスの回避という点で強みがあり、コントロールとの比較がなく、データの再利用であること、ドットプローブ課題のデータのみを用いているという点で弱いこと、理論的及び臨床的文脈で議論された。我々は、もはや臨床的不安症の人々が脅威に対する選択的注意によって特徴付けられるとは言えないと提議する。
結論:ABMのRCTに参加した不安症の人々は、ベースラインにおいて脅威に関連した注意バイアスによって特徴付けることはできない。


感想:インターバルベースの分析とは、不安者の注意バイアスがどれくらいありそうかをms単位で分析し、バイアスが0-5msが最も信頼できるバイアスの程度であることを示している。実体験と符合するメタ分析の結果である。少なくとも自分が行った不安のアナログ研究では、注意バイアスの測定によってバイアスが示されたことはほぼ無い。これは課題のパラメータや教示、分析のレベルの問題では無いと思っている。自分の研究では少なくとも不安に関しては注意バイアスを扱う研究には慎重になろうと思う。

2019年9月21日土曜日

拡張された自己:対象を自分のものとすることによる内側前頭前野の自発的活動

Extended self: spontaneous activation of medial prefrontal cortex by objects that are 'mine'.
Kim, K., & Johnson, M. K. (2013). Extended self: spontaneous activation of medial prefrontal cortex by objects that are ‘mine’. Social cognitive and affective neuroscience9(7), 1006-1012.

閣僚された自己の概念は、自分ではないものを自分のものとして取り入れることと関連している。拡張された自己を支持する神経基盤はfMRIによって人々が事物を自分のものと帰属する想像をしている際に内側前頭前野の活動上昇が見られることから示されている。本研究では、自己と関連づけられた事物が、顕在的には自己関連性判断を求められていない場合でも内側前頭前野の活動を伴うかを検討することである。fMRIスキャンにおいて被験者は以前に自己に帰属した事物とそうでない事物を刺激として混在させたオッドボール課題に従事した。自身のものであると想像できた事物に対しては、そうでない事物よりも内側前頭前野と後部帯状回皮質の活動上昇が見られた。さらに、所有官の操作の後に行われた事物に対する選好の変化は、内側前頭前野の活動によって予測された。全体的にこれらの知見は自己に関連づけられた外的刺激を自分のものとして取り入れるという拡張された自己の概念の神経活動による証左を与えた。

感想:大学院生の時によく読んでいた論文の著者が書いた論文。大学院以来、自己関連処理からは距離を置いていたので、このような研究があることを知らなかった。この研究もcue-approach trainingと同様に腹側の内側前頭前野が活動している。腹内側前頭前野が事象に対する価値のエンコーディングに関与することは知られているが、逆に腹内側前頭前野を駆動することで事象に価値を加えることができると考えられる。この研究テーマはcue-approach trainingとともにフォローしていきたい。

2019年3月14日木曜日

webブラウザ上での心理実験の試行

psychopyの最新バージョンでは、pavloviaというサイトと連携して、psychopyで作成した課題をアップロードしてwebブラウザ上での刺激提示と反応取得が可能である。実際にはもうひとつ前のバージョンからできていたが、よくわからないエラーが出てまともに動作する課題はわずかだった。
ともかく、いくつか試行してわかったことを箇条書きで残しておこう。
・IEではpavlovia自体にアクセスできないようだ。chromeでは問題なくアクセスできるし、刺激提示と反応取得には特に異常なし。当然、PCのディスプレイ設定によってアスペクト比は変動する。
・psychopyの現行バージョンではテキストの文字サイズの仕様に変更があったようで、日本語テキストは大きく表示される。これはpavlovia上でも同じ。文字サイズの調整が必用。
・Builderで作成した画像刺激とキーボードまたはマウスの反応取得を同期した課題は割とシンプルにpavloviaで動作する。
・同じく、Builderで作成し、刺激や変数などのリストの情報取得を行う課題も、pavlovia上で問題なく動作する。
・BuilderのCodeコンポーネントはpavlovia上ではまず機能しない。pavlovia上ではpythonコードをjsonコードに置き換えて実行しているが、Codeコンポーネントに記述したコードはjsonコードに反映されていないかうまく置き換えられていないようである。このため、PsyhopyのCodeコンポーネントに記述した内容(if文や内部での計算など)はjsonで新たに書き加える必要がある。jsonに置き換えられれば問題なく動作するが、pythonに慣れていると文法の違いが面倒になる。
・Builderのratingコンポーネントとsliderコンポーネントは、正常に動作しない。おそらく、十分検討していないがratingコンポーネントは使えないだろう。sliderコンポーネントはpavlovia上では表示が若干おかしくなる(簡素化される?)が、工夫すればデータの取得は可能。アンケート実施は可能であろう。ただ、それよりもpolygonコンポーネントとmouseコンポーネントを連動させる方がpavlovia上では機能的に思える。ただし、なぜかpolygonコンポーネントは多角形の表示は設定どおりに表示されない。
・Builderでデータをexcelで吐き出す設定をしてもpavlovia上でのデータはCSVしか吐き出されない。些細なことだが。

現段階では以上のことが分かったが、PsychopyのForumでは問題が数多く報告されるとともに開発者がアップデートを検討しているため、どんどん使い勝手が良くなるだろう。比較的小規模のオンライン実験ならPavloviaを使えばコストが非常に少ない。来年度はSonasystemと連携させながらPavloviaで心理実験ができるようにするつもりである。

2018年2月8日木曜日

pythonによるモンドリアン図形の作成

実験に使用する図形としてモンドリアン図形が必要になったため、少し探したところhttps://github.com/AnoAn/Mondrian-generatorにてpythonで作成するスクリプトを見つけた。psychopyをimportする必要がある。

2017年6月30日金曜日

心理学において説明よりも予測を選択すること

Yarkoni, T., & Westfall, J. (2016). Choosing prediction over explanation in psychology: Lessons from machine learning. Perspectives on Psychological Science

心理学は、歴史的に行動の原因となるメカニズムの説明に徹頭徹尾関心を持ってきた。無作為課され、非常に統制化された実験は心理学研究の黄金基準として大切にされ、種々の行動の種々の媒介・調整変数の終わりなき検討がなされている。我々は、心理学のほとんどは行動の原因を説明することに焦点を当てる複雑な心理学的メカニズムの理論を提供する研究プログラムが多くを占めているが、著しい正確性を持って将来の行動を予測することがほとんどできない。我々は、機械学習の領域から心理学をより予測科学に為らしめる原理と技術を提案する。主要な心理学の予測的研究課題に焦点を当てたいくつかの基盤となる概念と機械学習のツール、例をレビューする。説明よりも予測により焦点を当てることで行動をより理解することが究極的には可能であると提案する。

心理学に対するここ数年のモヤモヤが割と解消した感じ。というか、自分の志向性的が説明より、予測あるいは操作にあるということが明確になった。

2017年3月24日金曜日

DCMを用いた感情ラベリングの理解の進展

 (2013). Advancing understanding of affect labeling with dynamic causal modeling. NeuroImage82, 481-488.

偶発的な感情制御のフォームのメカニズム的理解は感情科学における基礎的応用的研究への示唆を与える。本研究では、fMRIのDCMを表情ラベリングパラダイムに用いて前頭前野から皮質下への影響を検討した。感情ラベリングにはvlPFC、amygdala、ブローカ領域を含む4つの領域を用いた。64個のモデルを45人の健常者を対象に検討した。32個のベイズモデルでは強固な内在的なネットワークの結合性がしめされた。ラベリングの調整効果は、ブローカ領域からamygdalaまたはそれよりも強いvlPFCからamygdalaへの抑制効果を示すベイズモデル平均において強固に観察された。これらの結果は、これまでに相関関係で示されていた皮質ー皮質下領域の負のカップリングを頑健かつ拡張する知見である。

感情ラベリングのメカニズムを考えるうえで非常に重要な知見。実際に自分でもやるべきだと思っているが、なかなか進まないのが残念。

2017年3月23日木曜日

知覚された道徳への脅威が引き出す汚染関連強迫行為の傾向

Threats to moral self-perceptions trigger obsessive compulsive contamination-related behavioral tendencies
Doron, G., Sar-El, D., & Mikulincer, M. (2012).  Journal of behavior therapy and experimental psychiatry, 43(3), 884-890.

汚染恐怖に関連した強迫は日常生活を著しく害する。本研究では知覚された道徳に対する脅威が、汚染関連強迫行為の傾向を生起させるかを検討した。
3つの実験により、道徳関連プライミングが汚染関連行動に及ぼす影響を検討した。
自己の道徳における不適格は、強迫行為の傾向上昇を導いた。この影響は、自己に関連したネガティブな情報に限定された。この知見は、事前の自尊心やストレス、不安、抑うつおよび気分の変動性とは関連しなかった。
本研究は非臨床サンプルに対して行われた点で限界がある。
道徳的な過敏性は、汚染と関連した恐れと因果関係があるだろう。この過敏性に対する治療は、強迫性障害の治療にも有用かもしれない。

この論文の研究者は数年前から愛着との関連も検討しながら、このテーマで研究をしている。実験手続きでは、被験者自身の道徳的態度が一般母集団と比較して低い(カバーストーリーだが)ことを正規分布でプライミングしている。
非常に興味深いが、いかにも実験社会心理学的研究でもある。
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