2011年5月27日金曜日

ニューロフィードバック:感情ネットワークの自己制御として有望なツール

Neurofeedback: A promising tool for the self-regulation of emotion networks 2011 Neuroimage

リアタイムfMRIはニューロフィードバックを通して脳機能のネットワークの自己制御を可能にする機会を生み出す。我々は、13人の被験者を対象に感情ネットワークをfMRIで個別に同定し、島と扁桃体の活動をコントロールできるように訓練を行った。被験者は短時間の訓練でこれらの脳機能を制御できるようになった。ニューロフィードバック中の感情ネットワークのコントロールに伴い楔前部とMPFC、線条体の活動増加がみられた。これらの結果は感情ネットワークのニューロフィードバックの実現可能性を示し、治療ツールとしての発展が可能であることを示唆する。

細かい方法が良く分からない研究だが、IAPSを見せて感情処理と関連して活動亢進のみられた領域を個人ごとにLocaliserとして同定した後に、Localiserの活動をフィードバックしたようである。Localiserの位置が微妙に被験者ごとに異なるのはこれで良いのだろうか?ニューロフィードバックの際の制御方略は教示していないようだが、ここで学習した制御方略を日常生活でも繰り返し用いることによって感情のコントロールが長期的に可能になれば新しい治療法になるかもしれない。技術的なハードルが高いが。

2011年5月25日水曜日

パニック障害の認知行動療法の後のトリプトファン減少の効果

Rapid tryptophan depletion following cognitive behavioural therapy for panic disorder. 2011 Psychophamacology

本研究の目的はパニック障害に対するCBTに治療反応を示した患者の急性のトリプトファン減少(Rapid tryptophan depletion:RTD)の効果を検討することである。RTDによってパニック症状の喚起による不安症状がベンゾジゼアピン阻害薬より上昇すると予測される。9人のCBTを受けたパニック障害患者はトリプトファンフリーのアミノ酸ドリンクとプラセボを飲む日を二重盲検で割り当てられた。さらにベンゾジゼアピン阻害薬とそのプラセボを別の時間に飲んだ。RTDとベンゾジゼアピン阻害薬の効果には交互作用があり、RTDに割り当てられ、CBTに反応した患者はベンゾジゼアピン阻害薬によるパニック症状の喚起によって不安症状が上昇した。パニック症状はRTDの有無の影響を受けなかった。この結果はCBTに反応を示した患者のRTDに対する脆弱性を示唆している。

うつ病のCBTで同様の研究があったが、その論文ではRTDの効果は無かった。この研究ではパニック症状そのものはRTDの影響を受けなかったので、RTDによるセロトニン系の脳部位の機能低下が不安を上昇させたと考えられる。

2011年5月24日火曜日

脅威の予期における主観的反応、自律反応、神経反応は脅威の強度と神経質傾向の機能によって変化する

Experiential, autonomic, and neural responses during threat anticipation vary as a
function of threat intensity and neuroticism Neuroimage 2010
予期に伴う情動反応はチャレンジに対して準備している主体にとって重要な役割を果たす。このような現象は行動的反応、自律反応、神経反応のシステムの変化がトリガーとなって生じる。本研究では、電気ショックによる予期不安のレベル(安全、中、大)を変化させることによって生じる行動生理的インパクトを検討した。これにより予期不安反応を幅広く検討することが可能になる。2つの研究により、95人と51人の女性の参加者を集め、電気ショックの予期課題とそれに伴う不安の評価とSCRを測定し(研究1)、fMRI測定を行った(研究2)。結果からは、不安の主観的評価とSCRにステップワイズな変化が示された。いくつかの脳領域は安全なトライアルに比べて電気ショックの予期に伴う顕著な活動がみられた。それには視床下部、PAG、尾状核、中心前回、視床、島、腹側前頭皮質、背側MPFC、ACCが含まれている。これらの領域は予期の程度に応じて線形的な活動の増加がみられた。これらの反応は神経質傾向によって調整されており、神経質傾向が高いと課題全体を通して不安が高い傾向があり、さらに中から大に至る試行における脳活動が減少していた。これらの知見から、神経質傾向は予期不安に対する感受性に影響しており、不安障害のリスクとの関連に対して新たな視点を示唆した。

神経質傾向はむしろ予期不安に対する脳活動を減衰するという研究。被験者数も多く、脳活動もこれまでの先行研究と同様の部位が出ているのでこの結果の信頼性は高いと思う。神経質傾向がむしろ予期不安に伴う脳活動を減らすという点は重要。おそらく、ベースラインの時点から予期不安が生じているので、ベースラインと比較したときに予期不安の条件の脳活動が相対的に低く算出されるのだろう。
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