2011年6月28日火曜日

気分と関連した内側前頭前野の反応はうつ病の再発を予測する

Mood-Linked Responses in Medial Prefrontal Cortex Predict Relapse in Patients with Recurrent Unipolar Depression 2011 Biological Psychiatry

気分変動に伴う認知プロセスの変容はうつ病の再発リスクの上昇と関連しているが、その神経基盤とうつ病の再発や予防との関連はほとんど知られていない。16人の寛解したうつ病患者と16人の健常者はSadもしくはNeutralな動画を視聴している最中にfMRIを行った。そして、感情反応と関連した脳活動と18カ月後の再発との相関を算出した。ROC曲線を再発を予測する信号値のカットオフを決めるために用いられた。再発と関連した領域は群間比較した。患者群ではMPFCと視覚野の活動が再発を予測していた。MPFCの活動は反芻と関連しており、視覚野の活動はアクセプタンスと関連していた。健常者と比較して、寛解した患者はMPFCの活動が低下しており、視覚野の活動が上昇していた。MPFCは感情制御というよりもうつ病の再発を予測する指標であることが示された。寛解の維持はMPFCの活動が正常化することとして特徴づけられる。さらに、視覚野の活動は再発に対する抵抗性を予測しており、ネガティブ感情に対する反芻というよりは感覚野の再発予防の役割を示すものである。

内側前頭前野はうつ病においては症状の悪化と関連した要因として機能すると考えられうると思う。感情制御などの機能とも関連するが、ネガティブ情動の悪化と改善に同じような脳部位が関わるということは、内側前頭前野の働き方を決める別の要因があるのかもしれない。

2011年6月24日金曜日

グルココルチコイドは消去ベースの心理療法を促進する

Glucocorticoids enhance extinction-based psychotherapy 2011 PNAS

不安障害に対する曝露療法は恐怖消去に依存すると考えられている。前臨床試験においてグルココルチコイドが消去を促進することが示されていることから、我々はこれらのホルモンが曝露療法を促進するかを検討した。2重盲検のRCTにより、40人の高所恐怖症の患者をヴァーチャルリアリティによる曝露療法で治療した。20mgのコるちぞーるとプラセボを治療セッションの1時間前に毎回投与した。被験者は最終セッションの3-5日後と1カ月後に治療後のアセスメントを行った。コルチゾールを投与した群は質問紙による高所恐怖が治療後、フォローアップ双方でプラセボよりも減少していた。さらに、コルチゾールを投与した群はヴァーチャルエクスポージャー中の急性の不安とフォローアップ時の皮膚伝導水準が有意に低下していた。これらの結果はコルチゾールが曝露療法の効果を促進することを示している。

D-cycloserineによる増強療法と同系統の研究。記憶の変容を促進する薬物なら何でも曝露療法を増強するのかもしれない。しかし、SCLしか図っていないが、記憶の変容過程と促進の脳機能を測定しておけば、薬物を使わなくても特定の脳機能を刺激することにより曝露療法を促進できるのではないか。

2011年6月22日水曜日

パニック障害の進展における内受容的恐怖条件付けの役割

The role of 'interoceptive' fear conditioning in the development of panic disorder Behavior Therapy 2011
一般人口の20%以上は生涯に少なくとも一回のパニック発作を経験するが、パニック障害に発展するものは少数である。条件付けのメカニズムは、パニック障害になる人々のパニック障害の発展がトラウマ的なパニック発作に基づくと説明している。準備理論によると、ある種のCueは他のCueよりも条件付けされやすいことを示唆しており、パニック障害の場合は内的、身体的な危険のシグナルである。本研究の目的は、異なる内的、身体感覚をCSとして、35%CO2吸入をUCSとした文章による異なる条件付けパラダイムを用いて準備理論を検討することである。33人の健常者は“窒息(する状況を書いた文章)”“ニュートラル(でリラックスした状況を書いた文章)”“緊急(的状況を書いた文章)”3つの文章条件に配分された。学習期には2つの文章のうち1つの文章を聞いた後に35%のCO2(CS+)を吸入し、もう一方は部屋の空気を吸入した。学習期の後に文章のみを呈示するテストをおこなっところ、窒息の文章に振り分けられた被験者のみ主観的不安と喚起量の変化がみられた。この結果は内受容的条件付けと準備性理論と喚起量の役割から論じられる。

条件付けの設定に工夫と労力をかけている。窒息の文章のCSとしての獲得のされやすさには窒息がパニック発作と類似していることが関係しているということらしい。文章に対する評価や認知が介在しないということなのでCSの質の違いによる脳の反応を同じ条件付けパラダイムで測定できれば、無意識化の条件付けのメカニズムの脳内システムを明らかにできる可能性がある。

2011年6月13日月曜日

自閉症における全脳の構造MRIの予測値の検討:パターン分類アプローチによる

Investigating the predictive value of whole-brain structural MR scans in autism: A
pattern classification approach 2010 Neuroimage

自閉症スペクトラム障害は通常の多変量解析では検出し難い脳構造の微妙で空間的な変化を伴う。多重比較補正が求められるため十分な件出力を得るためには大規模なサンプル数が必要とされる。小サンプルによる神経構造学的変化に関する報告は大きなばらつきがある。また、VBMでは予測ができないため診断上の価値は制限される。我々はSVMによる全脳の分類を用いて自閉症スペクトラムの神経構造ネットワークを検討し、構造MRIの成人の自閉症スペクトラムの予測の価値を検討した。結果ではSVMとVBMを比較した。我々は44人の男性成人を対象とした。22人の自閉症スペクトラムと22人の健常対照者が参加した。SVMでは自閉症スペクトラムと健常者を弁別する区間ネットワークが同定された。これらの中には辺縁系、前頭―線条体ネットワーク、前頭―側頭ネットワーク、前頭―頭頂ネットワーク、小脳が含まれていた。灰白質にSVMを適応したところ、自閉症スペクトラムの被験者を86%の特異度、88%の感度で分類した。68%のケースは白質を用いて分類された。ハイパープレーンの距離は症状の重症度と相関していた。対照的に、VBMは対照的に群間差がわずかしか見られなかった。これらの結果から、我々はSVMで自閉症スペクトラムと健常者の間の脳内ネットワークの微細な空間的な相違を検出できると提案する。また、これらの相違は症状の重症度を予測することも可能である。

2011年6月10日金曜日

高磁場MRIを用いたうつ病の治療反応予測

Prognostic prediction of therapeutic response in depression using high-field MR imaging 2011 Neuroimage

大うつ病性障害の治療の著しい発展にも関わらず、患者がどのように治療反応を示すかという点にはかなりのばらつきがある。約70%の患者は標準的な抗うつ約治療によっていくらかの改善がみられるため、非治療抵抗性うつ病(NDD)とみなされるが、残りの30%の患者は治療に反応しないために治療抵抗性うつ病(RDD)とみなされる。現時点では、うつ病や治療予後を同定するために用いられるような客観的、神経学的マーカーは存在しない。そこで、我々はSVMを用いて治療前の神経解剖学的構造で診断と予後を検討した。61人のうつ病患者と42人の健常者の構造MRIを撮像した。患者は標準的な抗うつ薬治療を受けていた。臨床結果に基づいて、23人のRDDと23人のNDDに群分けした。灰白質に基づいた診断精度はRDDで67%、NDDで76%であった。白質に基づいた診断精度はRDDで59%、NDDで85%であった。灰白質でのSVMはRDDとNDDを70%の精度で弁別できた。対照的に、白質でのSVMは65%の精度で弁別した。これらの結果は灰白質と白質がうつ病の診断と予後を予測する潜在性を持ち、治療を行ううえでの生物学的マーカーの使用に向けた第一歩となるだろう。

2011年6月8日水曜日

精神病リスクの同定と変遷の予測のための神経解剖学的パターン分類の使用

Use of Neuroanatomical Pattern Classification to Identify Subjects in At-Risk Mental States of Psychosis and Predict Disease Transition 2011 Archives of General Psychiatry

ARMSを同定するには前駆症状の徴候による。近年、機械学習アルゴリズムはMRIデータをベースにして神経精神疾患の患者を診断分類することに成功している。我々は多変量の神経解剖学的パターン分類が精神病リスクを同定し、その変遷を予測できるかどうかを検討した。多変量神経解剖学的パターン分類は、早発もしくは後発のARMSと健常者の構造MRIデータに基づいて行われた。この方法の予測力は、精神病に変遷したARMS,精神病に変遷しなかったARMS、健常者のベースラインのデータによって評価された。分類の一般性は交差妥当性と新たな45人の健常コホートによって推定された。最初の分類は20人の早発のARMS,25人の後発のARMS,25人の健常者が含まれた。次に15人の精神病に移行したARMS、18人の移行しなかったAMRS、17人の健常者で行われた。3群の分類の精度は、健常者86%、早発のARMS91%、後発のARMS86%であった。また、2つめの解析では健常者90%、精神病に移行したARMS88%、精神病に移行しなかったARMS86%であった。新たな独立した健常者で1つ目の解析では96%、2場面目は93%であった。ARMS群の相違と臨床的予後は全脳の神経解剖学的異常パターンの解析によって同定できるだろう。

2011年6月6日月曜日

言語流暢性課題に対する神経活動のパターンは統合失調症と双極性障害の診断の特異性を示す

Pattern of neural responses to verbal fluency shows diagnostic specificity for schizophrenia and bipolar disorder 2011 BMC Psychiatry, 11:18

遂行機能と言語処理の障害は統合失調症と双極性障害の特徴である。これらの疾患の機能的神経基盤は共通点と同様に特異性がある。統合失調症と双極性障害の神経活動の異なるパターンを決定することは診断のためのバイオマーカーを提供するだろう。104人の被験者が言語流調整課題遂行中にfMRIの測定を行った。被験者の内訳は、32人の寛解した統合失調症の患者、32人の躁病期の双極性障害の患者、40人の健常者であった。言語流調整課題に対する神経活動を各群で検討し、機械学習によって神経活動のパターンによる診断のポテンシャルを検討した。言語流調整課題遂行中に、両患者群はACC,DLPFC,Putamenの活動が健常者より増加し、Precuneus,PCCの活動が減少した。活動の程度は統合失調症患者が最も大きく、次いで双極性障害患者、健常者の順だった。神経活動のパターンは統合失調症患者を92%の精度で識別し、双極性障害は79%の精度で識別した。双極性障害の分類のミスは双極性障害の患者を健常者と分類するために生じた。要約すると、統合失調症患者と双極性障害の患者は両者ともに前頭前野、線条体、デフォルトモードネットワークの機能に変化がみられ、特に統合失調症患者において機能障害の程度が大きかった。言語流暢性課題に対する反応のパターンは高い精度で統合失調症と双極性障害の患者を診断した。言語処理に対するfMRIによるパターン認識は統合失調症の診断マーカーになりうるだろう。

2011年6月3日金曜日

うつ病における反芻の神経相関

Neural correlates of rumination in depression.2010 Cognitive, Affective, & Behavioral Neuroscience
自身に焦点を当てた繰り返される思考、すなわち反芻はうつ病の発症と維持を理解するために重要である。反芻はネガティブ気分を悪化させ、ネガティブ刺激に対する情動反応を増大し、ネガティブ記憶へのアクセスを促進する。本研究ではうつ病患者と健常者を対象に反芻の神経機構をfMRIを用いて検討した。我々は反芻、具体的な気ぞらし、抽象的な気ぞらしの相違を評価するための課題を14人のうつ病患者と14人の健常者に行った。うつ病患者はOFC、Subgenual ACC、DLPFCの活動亢進が反芻VS具体的な気ぞらしの比較でみられた。反芻VS抽象的な気ぞらしではAmygdala、Rostral ACC/MPFC、DLPFC,PCC,海馬傍回の活動がうつ病患者で亢進していた。これらの結果は反芻がうつ病における辺縁系、MPFC、DLPFCの機能亢進と関連することを示唆した。

考察ではDLPFCの活動に関して解釈が十分できないと書かれていた。おそらく反芻はうつ病患者では気ぞらしよりもワーキングメモリーを占有するので、DLPFCが活動するのかもしれない。単純にDLPFCが活動した方が気分が良くなるというわけではないようだ。
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