2010年3月31日水曜日

今後の計画

今日が大学院最後の日である。とはいえ、これからもやっていくことに大きな変化があるわけでもない。今後の方針としては、感情制御の基礎研究を細々と行っていく。来年度は感情制御の基礎検討として生理指標を用いた実験とパニック障害の病態検討のためのfMRI研究を行う計画である。このうち一つでも何か論文にできれば尚良いが。いずれにしろ、丸4年かかったが無事修了できて良かった。あっという間というわけでもなく、振り返れば様々なことがあったが何とか乗り切ったという感じだ。年月は経って行くが、環境の変化に対応しながら自分のできることをやり続けられるようにしたい。

2010年3月26日金曜日

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediationについて

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation(NEAR)を今勤めている病院で計画している。日本語の本を買って読んでみたが、基本的にリハビリテーションの内容は患者に合わせて雑多なものを使用するというスタンスのようなので、同じNEARといってもやっていることは場合によって異なると思われる。認知行動療法的に考えれば、認知機能について機能分析をした上で、問題点に対してそれぞれ有効な技法を組み合わせて実行すると言ったところだろう。しかし、問題はリハビリテーションの具体的な内容がコンピュータープログラムで行われていると言う点である。児童や学生の教育用のプログラムは日本でもあるが、それらが認知機能にどのように有効かは分からないので、患者の認知機能の障害が評価できてもそれにあったプログラムを使えるだろうか?できれば既にNEARを施行している施設に質問したいと思う。

2010年3月22日月曜日

感情に焦点を当てる:マインドフルネスは悲しみの神経表出を変える

Farb NA, Anderson AK, Mayberg H, Bean J, McKeon D, Segal ZV. 2010 Minding one's emotions: mindfulness training alters the neural expression of sadness. Emotion. 2010 Feb;10(1):25-33.

ネガティブな感情を和らげ、耐性を増すことはメンタルヘルスの特徴である。マインドフルネストレーニング(MT)はそのような結果をも足らずものの、作用機序は殆ど知られていない。本研究では、fMRIを用いて8週間のMTを受けた群と待機群の悲しみ気分の誘導と関連した神経活動を比較した。悲しみ気分は自己関連づけと関連した脳領域広範の活動をもたらした。主観的評価が等しかったにもかかわらず、MT群は耐性感覚野の活動が増加した。これらの領域の活動は、抑うつ症状の減少と関連していた。

マインドフルネスはあまりよく知らないが、その理由は作用機序が不明瞭で了解できない部分が多いからだろう。このような神経活動から作用機序を検討する試みが進んでいけば、作用機序が明確になって理解ができるようになるかもしれない。

2010年3月19日金曜日

社会不安障害における自己に対するネガティブな信念への認知的再評価の神経メカニズム

Goldin PR, Manber-Ball T, Werner K, Heimberg R, Gross JJ. 2009 Neural mechanisms of cognitive reappraisal of negative self-beliefs in social anxiety disorder. Biological Psychiatry 66, 1091-1099

社会不安障害は自己に対するネガティブな信念を持つ。このネガティブな信念は感情処理を促進し、感情の制御を妨害する。認知的再評価は自己に対するネガティブな信念を変化させ、感情の活性化を制御する目的で用いられる。しかし、この認知的再評価と社会不安障害の神経基盤との関連は明らかになっていない。27人のSAD患者と27人の健常者を対象とした。被験者は個々人にとってネガティブな社会的場面を想起させる単語を観察した。その際に、認知的再評価を行う条件と行わない条件を設けた。SAD患者は認知的再評価を行う場合でも行わない場合でも刺激に対してネガティブな感情を活性化させた。しかし、認知的再評価によってネガティブ感情を低下させることはできていた。認知的再評価により、扁桃体の活動は健常者では比較的早期に低下していたが、SAD患者ではより遅かった。扁桃体と外側前頭前野の機能的結合性は健常者では強い負の相関をしめしたが、SAD患者では機能的結合性が低下していた。この結果は、SADにおける認知的再評価の自己効力感とネガティブ感情と関連すると考えられる。

認知的再評価の脳機能画像研究はうつ病などでも行われるようになってきている。認知的再評価のプロセスについては、開始直後には感情を制御するが、それが遂行された後は制御状態を維持する過程に移行すると言われている。このプロセスは脳活動にも反映される可能性があり、それを検出するためにはEvent-related designの方が良いだろう。

2010年3月17日水曜日

サッカーの話:アーセナル

NHKの衛星放送でプレミアリーグを放送しているが、アーセナルの試合は必ず視聴する。最近は連勝しているが、相変わらず怪我人が多くキャプテンのセスクも今は怪我をしている。この間のハルとの試合でも欠場していたが、その時にディフェンスにソル・キャンベルが出場していた。ソル・キャンベルとは自分の誕生日が同じなのだが、それに関係無くソル・キャンベルは何故か気になる選手だ。顔も身体も典型的なディフェンダーという感じで非常にごつい。多分、数年前にウイニングイレブンにはまっていたときに恐ろしくパワーのあるディフェンスだった。スピードは遅いので俊足のフォワードには身体をぶつけられないとどうにもならないが。その試合でもスピードのある相手にかなり手を焼いていて思い切りファールをするしか相手を止められていなかった。彼は現在36歳らしいが正直プレミアリーグのレベルでやっていける選手とは思えなかった・・・。

うつ病の経過に伴う自己関連づけと前頭前皮質:パイロットスタディ

Lemogne C, Mayberg H, Bergouignan L, Volle E, Delaveau P, Lehéricy S, Allilaire JF, Fossati P. in press Self-referential processing and the prefrontal cortex over the course of depression: A pilot study Journal of Affective Disorders
うつ病は自己に焦点を当てた認知バイアスを示し、先行研究ではこの認知バイアスと関連してDorsal MPFCとDLPFCがうつ病患者においてユニークな脳活動として示されてきた。本研究では、これらの脳活動がうつ病の転帰に伴ってどのように変化するかを検討した。各8名のうつ病患者と健常者を対象に自己関連づけ課題を行い、6~14週間の間隔を空けてfMRI測定を行った。結果は、うつ病患者において時間経過に伴いDLPFCの活動が低下したが、Dorsal MPFCの活動は高いままであった。Dorsal MPFCの活動に変化が見られなかったことは抗うつ薬単独治療に特徴的な結果であり、認知行動療法による治療によってどのような変化が見られるかは検討するべきである。

ごく最近これまで蓄積してきた認知行動療法前後のfMRIデータを投稿したが、この論文の著者からそのデータについて質問とともにこの論文が送られてきた。

2010年3月16日火曜日

抑うつ症状と感情の認知的制御:fMRI研究

Beevers CG, Clasen P, Stice E, Schnyer D. 2010 Depression symptoms and cognitive control of emotion cues: a functional magnetic resonance imaging study Neuroscience. うつ病は認知的制御の低下が症状維持の一助となっている。この研究では、Happy, Sad, Neutralの表情刺激をスクリーンの左右どちらかに提示し、その後プローブが表情刺激と一致した場所か不一致の場所に表示された。被験者は、プローブが出た場所と一致したボタンを押すように求められた。この課題を実行している際にfMRIの計測を行った。32人の被験者は一般広告で集められ、抑うつ状態をCESDによって測定し、抑うつ高群と抑うつ低群に分けられた。結果は、表情刺激の位置と一致したプローブが提示されたときの脳活動に群間差は見られなかった。不一致の場合、抑うつ低群のVLPFCの活動は抑うつ高群よりも上昇していた。これは、抑うつが感情刺激に対する認知的制御に関わる脳機能を低下させている可能性を示唆する。

2010年3月12日金曜日

サッカーの話:バルセロナについて

スペインリーグのバルセロナは世界有数の強豪として知られている。先月のNumberというスポーツ雑誌を読んで知ったのだが、バルセロナの選手は一試合当たりのパスを受ける数とランニングの距離の比が他のチームと比べて圧倒的に少ないそうだ。これは、選手がとても効率よく走り、パスを受けていることを示している。それゆえに相手よりもスタミナを消費しないし、ボール支配率が高くなり、チャンスも多くなり、守備に回る時間も少なくなる。さらに、そのNumberの記事には続きがあり、サッカーでは常識なのだろうが、バルセロナの選手はボール保持者が常に2つ以上のパスコースを見つけられるように3人の選手が三角形を作ってパスをつないでいる。ただ、これ自体は他のチームでも変わらないセオリーなのだそうだ。バルセロナの場合、あえて相手がカバーしているエリアに飛び込んで三角形を作り、そこでパスを回しているために相手のマークがずれ、ゴール前でフリーになる選手が出てくるらしい。このようなことがわかったのも選手の走行距離や走った位置のデータ解析からだそうだ。バルセロナがなぜ強いかということについて、素人目には選手が良いとか戦術が優れているからとか色々と類推してしまう。憶測や類推ではなくデータに基づいて現象を説明したこの記事は素晴らしいと思った。

2010年3月11日木曜日

パニック障害の病因に対する現代の学習理論の見解

Bouton, Mineka, Barlow A modern learning theory perspective on the etiology of panic disorder. 2001 Psychological Review 108, 4-32

パニック障害に関する学習理論的説明はこの20年間様々なものが提唱されてきた。古くは古典的条件付けから始まり、批判に曝されながらオペラント条件付けによる説明なども行われてきた。筆者はパニック障害における恐怖の手がかりが環境に由来する外在的な手がかりだけでなく、内的な身体感覚を手がかりとして生じる可能性を論じている。条件刺激とパニック発作との連合は多様であり、本来異なるものである不安とパニック発作は交互作用し、条件刺激の連鎖の結果パニック発作が起こる場合もある。また、手がかりに対する認知や生物学的基盤がパニック発作を生じさせる脆弱性に関わると考えられる。
この論文はパニック障害の学習理論による理解を大きく進める重要なレビューである。認知行動療法を行う上での大切なClinical implicationも含まれている。

2010年3月10日水曜日

公開はじめ

とりあえず、ブログ作成。サッカーの話題が多くなりそうな気がする。研究について書くことはないので、サッカーについて。今年はサッカーワールドカップがある。日本代表も出場するが、かなり厳しいグループに入ってしまったと思う。しかし、自国開催以外であればどのグループでも日本にとって厳しいことには変わりないだろう。優勝候補は2008年の欧州選手権で優勝したスペインが有力視されている。個人的にはアーセナルが好きなので、セスク・ファブレガスが大活躍してほしい。彼のように90分間消えずにピッチを支配するミッドフィールダーは見ているだけで楽しい。しかし、今回は初のアフリカ大陸での開催ということもあり、予測しにくいだろう。いずれにしろ、ワールドカップ開催の時期は睡眠不足になりそうである。
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