2011年12月6日火曜日

短期の抗うつ薬の投与はうつ病のリスクの有る被験者の内側前頭前野のネガティブな自己関連付けを減衰する

Short-term antidepressant administration reduces negative self-referential processing in the medial prefrontal cortex in subjects at risk for depression 2011 Molecular Psychiatry

うつ病は情動処理の内側前頭前野の反応の変化と関連する。抗うつ薬は健常者のこれらの脳領域の神経反応を投与の初期において修正することが示されている。しかし、このような変化がうつ病患者で気分の変化に先行して生じるかは明らかになっていない。そこで、本研究では、二重盲検群間デザインにおいて、高い神経質傾向の表現形を示すうつ病のハイリスク群の被験者29名にシタロプラムとプラセボの7日間の投与影響を検証した。治療の最終日に自己関連語の分類課題を行っている際のfMRIを行った。ネガティブな自己関連づけにおける内側前頭前野、背側前帯状回、眼窩前頭皮質の活動がシタロプラムによって減衰し、気分の変動はなかった。これらの知見は治療早期におけるハイリスク群の神経活動の正常化を示しており、抗うつ薬がネガティブな認知バイアスと関連した神経活動に作用するという理論が支持された。

以前からHarmerは抗うつ治療の認知バイアスに対する作用機序を研究していたが、その系列で自己関連付けへの影響を調べたという論文だった。結局未治療のうつ病患者に対する抗うつ治療において調べないと結論が出ない話ではあるが、薬物治療の認知行動療法の差が、大雑把な意味での認知を変えるかどうかということではないのだろう。認知に対する治療法略語との影響は細かく調べないと作用機序の違いは分からないと思う。

2011年12月5日月曜日

未来に対するポジティブな期待を作ることによるうつ病の治療:症状とQOLに対するFuture-Directed Therapy(FDT)の効果に関するパイロット研究

Treating Major Depression by Creating Positive Expectations for the Future: A Pilot Study for the Effectiveness of Future-Directed Therapy 2011 CNS Neuroscience&Therapeutics

本研究ではFDTという外来のうつ病患者を治療するための新しい治療法の効果を検証した。この研究ではうつ症状と不安症状、QOLを測定した。この研究では未来に対するよりポジティブな持てるように援助するマニュアル化された治療を検証した。この治療では1セッション90分、全10セッションで構成されている。比較となるTAU群として伝統的な認知行動療法の集団療法を設定した。16人がFDTに参加し、17人がTAUに参加した。FDTによる治療により、うつ症状、不安症状、QOLの改善がみられた。TAUと比較して有意なうつ症状の改善がみられた。FDTは新たなうつ病治療の選択肢となる可能性を持つと考えられる。

従来のCBTより症状改善に効果があったということだが、誤差の範囲ではとも思う。しかし、Well-beingに焦点を当て、ネガティブな認知ではなく目標達成の妨げとなる認知を治療ターゲットとしているところに独自性がある。マズローの理論を教科書以外で初めて見た。これに限った話ではないが、うつ病の治療において何を効果の指標とするかは今後さらに重要な問題となると思う。症状評価やQOLだけでなく生物学的データの改善やその他再発予防、治療適応の予測因子を調べていく流れはさらに進むだろうと予測される。自分の立場からは、各従属変数をそれぞれ個別に測定するのではなく心理学や医学、神経科学の研究が統合した形で大規模な臨床研究を行えると良いと思う。
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