2011年7月29日金曜日

うつ病における接近と回避の役割の探索:統合的モデル

Exploring the roles of approach and avoidance in depression: An integrative model. 2011 Clinical Psychology Review

ヒトの行動は2つの動機に基いて構成される。ヒトルはポジティブな事象に接近したいという動機であり、もう一つはネガティブな事象を回避したいという動機である。接近と回避両方がうつ病をふくむ精神病理と関連している。しかし、いくつかの例外があるものの、うつ病における回避の動機は強調されていない。本稿ではうつ病における接近と回避の役割を検討しうつ病における接近と回避の統合的モデルを呈示する。接近の欠如と回避の動機はポジティブな体験と非抑うつ的な行動の強化を抑制し、うつ病の発症と維持に寄与する。さらに回避の過程はうつ病の発症と再発の脆弱性を増すようなネガティブな情報処理バイアスに働きかける。そして、回避の過程と接近-回避のシステムの関係の調節障害は達成不能な目標を追求を保持することによってうつ病に寄与すると思われる。理論的背景と経験的エビデンスがこのような現象を示唆している。うつ病における接近と回避の役割を理解することでうつ病の概念化と治療の改善の助けとなると考えられる。

図として神経科学的背景を含めて接近と回避のうつ病に対する影響を解説していた。接近と回避の話だけに当然偏っているので全ての情報を統合してはいないが。

2011年7月27日水曜日

気分はどのように感情記憶の構造に挑戦するか?

How mood challenges emotional memory formation: An fMRI investigation  2011 Neuroimage 56,3 1783-1790

実験的気分操作とfMRIは気分一致記憶の神経基盤を検討するための機会を与える。先行研究では気分障害患者において内側側頭葉が気分一致記憶バイアスに関わることが示唆されており、気分と感情記憶の構造の交互作用は検討されていない。特に気分一致効果に対して前頭前野領域がどのように関わっているかは不明瞭である。本研究ではEvent-related fMRIデザインで20人の健常者に対してHappy感情とSad感情が感情語(Positive, Negative,Neutral)の記憶にどのように影響するかを検討した。気分、刺激、記憶の主効果は気分一致もしくは不一致の記憶と関連した活動として検討された。結果からは扁桃体と海馬の活動が全体的な気分と再生率に関わっていることが示された。気分一致記憶の構造はNegative刺激の気分一致記憶にはOFC、Negative刺激の気分不一致記憶にはMFCとIFCによって特徴づけられることが明らかになった。これらの結果は学習の際の前頭前野領域の異なる部分の活動がNegative刺激の気分一致記憶と気分不一致効果に関与することを示しており、OFCが気分一致効果を、MFCとIFCが気分と刺激の感情価との間の不一致を乗り越える助けとなっていることが示唆された。

大昔、卒業論文のときに気分一致効果の研究をやっていた。何年も前なのでもはや記憶が薄れているが、後の指導教員にコメントをもらってからは、うつ病のモデルとしては理解しやすいがうつ病研究の題材としてはやりにくいと思っている。なぜなら、気分操作の効果は特性としての抑うつ群には影響しにくい上に、群の要因を加えると3要因になってしまうからである。この研究に関しては扁桃体と海馬についてもう少し突っ込んだ解析をしても良いのではないかと思う。MVPAなどを行ってそれぞれの条件における扁桃体と海馬の活動の意味を検討できるのではないだろうか。

2011年7月20日水曜日

BJPからのメール

British journal pf psychiatryに以前に投稿したことがあるので、編集部からメールが届いた。
インパクトファクターが約6(正確には5.9)になったという知らせだった。
エディターとしてはインパクトファクターが上がったことに複雑な思いがあるらしいことが書かれた後に以下のような詩が加えられていた。正確な意図は分からない。

The Impact Factory Song

There comes a time of year
Which for some yields joy and cheer
Whereas for others it brings gloom
And impending signs of doom
I refer to the end of June
It’s the Impact Factor tune
Which we dance to tho' we fear
Its strains may cost us dear
In promoting our alliance
'Tween scholarship and science
And sometimes in defiance
We reject our weak reliance
On the star by which we steer
With each number crunching tear

But we have to play the game
As our authors will turn to blame
If we fail them in our quest
To be better than all the rest
Now's the time to attest
In the BJP you must invest
And fan our impact factor flame
By seeing papers you can claim
Really are the best
And once published and assessed
All will be impressed
'cross East, North, South and West
Let the world then bold proclaim
Each author's new found fame

2011年7月7日木曜日

うつ病のMRI研究:系統的レビューとメタ回帰分析

Magnetic resonance imaging studies in unipolar depression: Systematic review and meta-regression analysis European Neuropsychopharmacology 2011

これまでの構造MRI研究のメタ分析はうつ病において皮質と皮質下の異常がみられることを示している。
さらに、著しい非均一性の系統的探索の欠如がこれまでの知見の一般性を損なわせている。我々は系統的レビューとメタ解析を効果量を推定するために行った。出版バイアスや研究デザインの多様性が効果量に及ぼす影響を検討した。本研究の目的はうつ病、双極性障害、健常者のMRI研究を系統的に比較することと年齢に関係なく全ての関心領域を検討すること、効果量に影響する要因をメタ回帰分析で検討することである。うつ病においては前頭前野、帯状回、海馬、線条体などの感情処理にかかわる領域の体積減少がみられた。下垂体と白質は増加していた。効果量に影響する要因は、方法、臨床データ、薬物療法、年齢であった。

2011年7月4日月曜日

ヒトの扁桃体における固定し、分散した恐怖記憶の痕跡

A Stable Sparse Fear Memory Trace in Human Amygdala 2011 Journal of Neuroscience

古典的条件付けは種を超えて保持されており、嫌悪条件付けの強力なモデルである。げっ歯類においては恐怖記憶は扁桃体の影響化において保存され、再活性する。霊長類において同様のメカニズムがあるという証拠はなく、逆に霊長類では扁桃体は嫌悪条件付けの初期にだけ寄与し、その後のフェーズは扁桃体の外に移行すると考えられている。本研究では、この問題をfMRIと多変量解析を合わせて再検討する。個人レベルにおいて、基底外側部と中心核がCS+とCS-を弁別することが示された。この弁別の強さは時間を経て上昇し、恐怖の行動反応と対になっており、固定化した恐怖記憶の表出と一致していた。この結果は返答たいの基底外側部と中心核が学習の初期だけでなく恐怖記憶の保続にも関与することを示唆している。恐怖の分散した神経表出は多変量解析によって明らかにされ、ヒトを対象としたこれまでの研究でとらえにくかった記憶の痕跡を明らかにした。

被験者が7人しかいないが、8人もパニック発作を起こしたために脱落したらしい。ここでの多変量解析とはサポートベクターマシンのことだが、恐怖記憶のメカニズムの検討のために用いられるのはおそらく初めてと思われる。
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