2012年8月28日火曜日

恐怖学習におけるセロトニンの影響

The influence of serotonin on fear learning 2012 PLoS once

嫌悪刺激とそれを予測する手がかりの間の連合学習は古典的恐怖条件付けの基盤であり、予測と結果の間のミスマッチによって駆動する。セロトニンが嫌悪的手がかりと結果の連合を調整するかを検討するために、我々はfMRIと健常者において脳のセロトニンレベルを低下させるトリプトファン欠乏食を用いた。古典的恐怖条件付けパラダイムにおいて、5HT欠乏の被験者は欠乏していないコントロールと比較して嫌悪事象の東大に対する自律反応が減少した。これらの結果は恐怖の神経回路の強固な構造である扁桃体と眼窩前頭皮質の嫌悪学習の信号減少と並行していた。恐怖学習においてセロトニンがドーパミンに対する反対の動機付けシステムであるという現在の主張と一致して、我々のデータは嫌悪事象に対する学習信号の表象にセロトニンが役割を果たす最初の実証的証拠を提示した。

セロトニン欠乏が恐怖条件付けに対する感受性を低下させるとは知らなかった。強化学習モデルに基づくと、セロトニンは嫌悪事象の予測と結果の誤差を調整する変数であり、ドーパミンのような報酬事象の予測と結果の誤差を調整する変数とは対照的らしい。つまり、セロトニン欠乏は嫌悪事象の予測と結果の誤差を調整することを困難にさせるため、恐怖条件付けにおける連合学習を低下させるようだ。

2012年8月20日月曜日

マインドフルネストレーニングは老年期の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減する:小規模な無作為統制試験

Mindfulness-Based stress reduction training reduces loneliness and pro-inflammatory gene expression in older adults: A small randomized controlled trial. 2012 Brain, Behavior, and Immunity

孤独な老人は炎症誘発性遺伝子の発現が増加しており、病気の罹患と寿命のリスクが増大している。以前からの行動的介入は孤独とその健康に対するリスクを低減しようと試みている。本研究では、8週間のマインドフルネスプログラムがウェイティングリストと比較して、老人の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減するかを検討した。予測と一致して、マインドフルネスプログラムは孤独を低減した。さらに、ベースラインにおいて孤独と炎症誘発性のNF-kB関連遺伝子の発現上昇が関連し、マインドフルネスはこの遺伝子発現を減少させた。そして、マインドフルネスはCRPを減少させる傾向がみらられた。本研究はマインドフルネスが老年期の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減する新しい治療であることを初めて示した。

心理的介入が健康を改善するメカニズムの中に炎症誘発性遺伝子の発現現象が媒介変数になっている可能性を示している。孤独という構成概念が炎症誘発性遺伝子の発現と関連していることを本当は前提としてはっきりさせなければならないのだろうが・・・。

2012年8月6日月曜日

うつ病における恐怖表情ではなく悲しみ表情に対する扁桃体の反応増加:気分状態と薬物療法との関連

Increased Amygdala Responses to Sad But Not Fearful Faces in Major Depression: Relation to Mood State and Pharmacological Treatment 2012 American Journal of Psychiatry

ネガティブ情動に対する扁桃体の反応増加は、うつ症状の背景にあるネガティブ情動処理のバイオマーカーでうつ病の再発の脆弱性であり薬物療法によって正常化する。本研究の目的はうつ病における顔表情に対する異常な扁桃体の反応が情動特異的であるか、また薬物療法によって変化するか、あるいは薬物療法を終えた寛解うつ病において特性として残存するかを検討することである。62人の治療なしのうつ病患者(38人が現在のうつ病、24名が寛解)と54人の健常対象者は間接的顔表情処理課題を行い、fMRI測定を行った。32人の現在のうつ病患者はシタロプラムで8週間治療を受けた。治療のアドヒアランスは血清中のシタロプラム濃度で管理した。現在のうつ病患者は健常者や寛解患者に比べて悲しみ表情に対する扁桃体の反応増加がみられた。シタロプラムは悲しみ表情に対する扁桃体の反応を根絶したが、恐怖表情に対する反応は変化しなかった。悲しみ表情に対する異常な扁桃体の反応はうつ状態に特異的であり、うつ病エピソード中のネガティブ情動バイアスの潜在的なバイオマーカーであると考えられる。

event-related designではなくblock designの顔表情課題で扁桃体の賦活を見た研究は珍しい。blockで良いなら楽な話だが・・・。

2012年8月3日金曜日

不安における適応的な脅威バイアス:扁桃体-背内側前頭前野の結合性と嫌悪の増強

The adaptive threat bias in anxiety: Amygdala-dorsomedial prefrontal cortex coupling and aversive amplification 2012 Neuroimage

機能的観点では、不安は嫌悪刺激に対するヴィジランスを増大し、危険を探知して回避する能力を向上させる。たとえば、我々が最近見出したように健常者において不安は嫌悪刺激の検出と防衛反応を誘発する。これは不安の適応的な機能であることはほぼ間違いないが、この情動特定的な効果の神経回路は明らかになっていない。本研究では、背内側前頭前野と帯状回はげっ歯類の前辺縁系と相同しており、これらの領域の働きが不安による適応的な脅威バイアスにおける返答たいの反応の増大と関連しているという仮説のエビデンスを示す。このために、我々は健常者において恐怖顔刺激と幸福顔刺激の同定中に電気ショックを与えることで新たな機能的結合性の解析を適用した。この効果は幸福顔刺激においてはみられない情動特異的な効果であり、恐怖顔刺激に対する行動反応の速さと並行しており、特性不安と正の相関があった。我々の最初の実験で示されたように、不安によって媒介され、情動特異的で、背内側前頭前野-扁桃体の嫌悪反応の増大するメカニズムが示された。これはげっ歯類の前辺縁系-扁桃体の回路と相同回路であり、特性不安との関連が示されていることから、不安障害の脆弱性の基盤であると考えられる。本研究は、適応的な不安の重要な神経メカニズムを指摘するものであり、非機能的な不安に潜在的なつながりを示すものである。

自分の研究ではネガティブ刺激の処理に背内側前頭前野と扁桃体の結合性が示されていた。背内側前頭前野と扁桃体のサーキットはネガティブな情動処理の亢進に関わると考えていたことは間違いではなかったようだ。
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