2012年1月31日火曜日

強迫性障害におけるfMRIパターン認識

fMRI pattern recognition in obsessive-compulsive disorder 2012 Neuroimage

強迫性障害は症状と関連した非特異的情動刺激に対する神経活動の調節障害に特徴がある。本研究では、恐怖刺激、不快刺激、中性刺激の認識においてOCDと健常者の脳活動のパターンを解読できるか検討した。さらに、脳活動のパターンの違いがOCD
と健常者を分類できるかを検討した。2種類の分類解析を行った。解析1ではそれぞれの刺激における脳活動のパターンから被験者が視認した刺激を分別した。解析2ではサーチライト解析によって局所脳活動パターンから診断的分類を行った。解析1では両群において恐怖刺激と中性刺激を分類することとが有意な精度で可能になり、不快刺激と中性刺激の分類は健常者の方が有意に精度が高かった。解析2ではOCD患者のOFCと尾状核において診断情報を得ることが出来た。これらの領域における分類精度は100%であった。結果をまとめると多変量パターン分類解析を用いることでOCDにおける信頼できるバイオマーカーを見いだすことが出来た。

全脳でパターン解析を行うよりも、症状喚起課題に関連した脳領域においてパターン解析をした方が分類精度は高まるようだ。

2012年1月30日月曜日

日本における統合失調症患者に対するNEARのパイロット研究

The pilot study of a Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation for patients with schizophrenia in Japan 2011 Journal of Psychiatric Research本研究の主目的は日本におけるNEARの実現性と認知機能に対する効果を示すことである。この多施設研究では疑似実験デザインを用いた。NEARプログラムは週2時間のコンピューターセッションと週一回の60分程度のグループセッションで更正されている。被験者はNEARを6ヶ月行った。さらに練習効果を考慮して、我々は21人の患者を6ヶ月の間隔をあけて2回アセスメントした。我々は認知機能を日本語版BACS-Jを用いて行った。結果的に、NEARグループは運動速度をのぞいて全般的な認知機能の改善が見られた。本研究の結果は欧米と同様に日本においてもNEARの有効性を示した。

今や懐かしいがNEARの日本における臨床研究が論文になっていた。認知機能だけでなく就労や復職、生活場面などがどのように変化したのかをより明らかにしていくことが望ましい。

2012年1月28日土曜日

不安と抑うつに対する短縮版Transdiagnostic インターネット認知行動療法のオープントライアル

An open trial of a breif transdiagnostic internet treatment for anxiety and depression. 2011 Behavior Research and Therapy
本研究は短縮版TransdiagnosticインターネットCBTの効果を検証した。この短縮版ではオリジナルの物と同じCBTの中核スキルを含んでいるが、8から5セッションに短縮し、治療期間を10週から8週に減らした。32人の被験者が参加し、大きく分けて大うつ病性障害、全般性不安障害、パニック障害、社交性不安障害出会った。被験者はオンラインの教育セッション、ホームワーク、毎週の臨床心理士とメールによるコンタクトを受けた。81%の被験者がプログラムを完遂した。治療直後と3ヶ月後のフォローアップデータはそれぞれ28人と32人から受け取ることができた。被験者はDepression and Anxiety scale、PHQ-9、GADにおいて有意な改善が見られ、それぞれのフォローアップにおける効果量は1.05,0.73,0.95であった。被験者はこの手続きに対して高い需要性をオリジナルバージョンと同等に示した。一方で、臨床家が被験者に費やす時間は短縮版で平均44分に対してオリジナル版は84分であった。これらの結果はTransdiagnosticインターネットCBTの効果を支持する物であり、短縮版が有効であることを示唆した。

不安とうつなら何でもありのTransdiagnosticCBTだが、集団療法で実施可能だろうか?集団で実施可能なら現場でも実施でき、実験やfMRIを行うこともできそうだ。まだその段階には至っていないのか、インターネット形式で発展させるつもりだろうか?

2012年1月25日水曜日

不安感情の生成と調節を支える一時的、持続的神経信号の相互作用

Interaction Between Transient and Sustained Neural Signals Support the Generation and Regulation of Anxious Emotion. 2011 Cerebral Cortex

不安感状は一時的な恐怖反応と持続的な不安があり、先行研究ではこれらのシグナルは異なる神経回路によって支えられていることを示唆している。本研究ではブロックーイベント混合モデルの情動喚起パラダイムを用いて55人の健常者に同時に一時的、持続的不安を測定することで、これらの潜在的に異なるシステムの相互作用を検討した。結果からは、情動処理に関わるネットワークの構成要素は、一時的不安と持続的不安にそれぞれ特異的な反応を示した。扁桃体と中脳は一時的不安にのみ反応し、腹側前脳部と島前部は課題によって喚起された不安にポジティブに跡をつける情動的文脈の中で持続的な活動を示した。少ない不安の状態は、腹内側前頭前野の持続的活動と関連していた。さらに、腹内側前頭前野は不確実性に対する不耐性のスコアが高いほど活動が低下しており、この領域の不活性は脅威刺激に対する扁桃体の一時的活動の増加と関連していた。本研究は時間的スケールを通して一時的不安と持続的不安の相互作用の脳回路がどのように関わるかを示し、一時的不安症状と持続的不安症状によって特徴づけられる臨床症状の調節障害の異なるメカニズムについて示した。

この論文の課題が今行っている実験課題と少し似ていた。一時的不安と持続的不安をどのようにデザインするのか論文だけでは理解できなかったが、自分でも出来るようになりたいと思った。

2012年1月23日月曜日

累積した苦痛と内側前頭前野、前帯状回、島の灰白質体積の減少

Cumulative Adversity and Smaller Gray Matter Volume in Medial Prefrontal, Anterior Cingulate, and Insula Regions 2012 Biological Psychiatry

苦痛とストレスの累積は精神疾患のリスクと関連する。基礎研究では前頭皮質と辺縁系に対する累積ストレスの影響は示されているが、ヒトを対照にした脳形態に関する研究は少ない。そこで、我々は苦痛の累積が情動の制御や自己制御、トップダウンプロセスに関わる脳領域の灰白質体積にどのような関連を持つか検討した。103人の18−48歳の被験者を対照に、苦痛の累積についての面接評価と構造MRIを行った。全脳のVBM解析を年齢、性別を調整して行った。苦痛の累積は内側前頭前野、島、前帯状回の体積減少と相関した。最近のストレスイベントは内側前頭前野と島の体積減少と関連していた。トラウマの経験は内側前頭前野、前帯状回の体積減少と関連していた。主観的な慢性ストレスとライフイベントの相互作用は眼窩前皮質と島、前帯状回の体積減少と関連していた。本研究の結果は苦痛となるライフイベントへの曝露経験の累積はストレス情動制御、衝動コントロールに関わる前頭皮質や辺縁系の体積減少と関連してた。これらの結果はうつ病や依存、その他のストレス関連性疾患への脆弱性を媒介する者と考えられる。

ストレスが直接脳体積の減少に関わるようだが、これを縦断的に調査すれば精神疾患への影響も調べられるだろう。

2012年1月16日月曜日

情動制御の発達:児童、思春期、青年における認知的再評価のfMRI研究

The development of emotion regulation: an fMRI study of cognitive reappraisal in children, adolescents and young adults 2012 Social Cognitive and Affective Neuroscience

情動制御のために認知的再評価を用いる能力は成人において適応的なスキルであるが、その発達については知られていない。認知的再評価は線形的な前頭葉の発達によってサポートされていると考えられているので、認知的再評価の発達も線形的であると予測される。しかし、社会感情的発達の研究からは思春期に特異的な非線形的発達が示唆されている。我々は10−13歳の児童、14−17の思春期、18−22の青年を対照にネガティブな情動を制御する認知的再評価の課題を行った。行動的には情動の反応の自己評価に年齢の効果は見いだせなかったが、線形関係と二次関数関係が認知的再評価の能力と年齢に有ることを見いだした。神経活動からは、我々は腹側前頭前野における活動の増加が年齢と線形的関係に有ることを見いだした。精神状態のような社会認知に関わる内側前頭前野、後部帯仗回、前部側頭皮質の活動が年齢と二次関数的関係にあることを見いだした。これらの領域は思春期において情動反応に対する活動の低下が見られたが、認知的再評価のときには著しく高まっていた。これらのことは、1:年齢と線形的に認知的再評価に関わる納活動が増加すること、2:思春期においては精神状態の帰属に関する領域が常態ではなく、3:認知的再評価のときには逆転することを示唆している。

思春期は嵐であるということか。認知的再評価の成熟については考えたことがなかったので面白い視点だと思った。願わくば成人のデータとの比較と思春期において社会認知に関わる領域に対して影響を与える要因や別の脳領域が何なのかを知りたいところである。

2012年1月6日金曜日

うつ病と不安障害における情動語の符号化と再認に関するfMRI研究

Functional magnetic resonance imaging correlates of emotional word encoding and recognition in depression and anxiety disorders 2011 Biological Psychiatry

うつ病、パニック障害、社交不安障害は成人において頻発する精神疾患であり、情動情報の処理に共通した異常があるという点で特徴的である。我々は情動語の符号と再認課題遂行中にうつ病患者51名、うつ病と不安障害の合併59名、不安障害のみの56名、健常者49名にFMRIを行った。さらに、症状の重症度と脳体積、抗うつ薬との関連も検討した。患者群は共通して右海馬の活動減少がポジティブ語の符号化中にみられた。ネガティブ語の符号時には島の活動増加がうつ病を有する群にみられ、扁桃体と前帯状回の活動増加がポジティブ語の符号においてうつ病患者のみにみられた。再認においては不安障害の患者は下前頭前野の活動増加がみられた。全体的には、薬物療法や脳体積はこれらの結果に影響しなかった。ポジティブ語の符号における海馬の障害はうつ病と不安障害に特有の共通した脆弱因子と考えられる。ネガティブ語の符号における島と扁桃体はうつ病におけるネガティブ情動に対する感受性の増加と解放の困難さが基盤に有るとおもられる。我々の結果はうつ病と不安障害の共通した神経生物学的障害を強調するものであり、ポジティブな情報に対する全体的な感受性の低下として特徴づけられる。

Biological Parametric Mappingを用いて解析していた。サンプリングなどの方法も含めて結果とともに優れた研究だと思う。
ツイート @freeroll_をフォロー