2012年12月27日木曜日

"Mind the Trap":マインドフルネス訓練は認知的硬直性を低減する

"Mind the Trap": Maindfulness Practice Reduces Cognitive Rigidity 2012 PLoS one

2つの実験によってマインドフルネスと認知的硬直性の関連を、Einstellung water jar taskを用いて検討した。被験者は3つのつぼを用いて特定の量の水を得るように求められた。初期の問題は同一複雑な構えによって解くことができるが、後期の問題(クリティカルあるいは罠の問題)はさらにシンプルな構えを加えることによって解くことができる。硬直性のスコアは複雑な構えの耐久力を通して計算された。実験1ではマインドフルネスを受けた被験者はまだ瞑想訓練を受けていない被験者よりも硬直性のスコアが低減した。実験2ではWaiting-listとのRCTを行い、そこでは同様の結果が得られた、我々はマインドフルネス瞑想は体験によって盲目になる傾向を通して形成された認知的効力性を低減すると結論付けた。この結果は過去の体験によって新規で適応的な方法を見落としてしまう傾向を減らすというマインドフルネスの利得という観点から議論できる。

柔軟性は次の実験でやろうと思っている。が、なかなか課題に落とし込むのは難しい。fMRIを前提にするとなおさら。しかし、マインドフルネスは何でも効果があるように思うが、その背景にあるメカニズムはシンプルな気がする。回りくどい過程を飛ばして情動やそれを制御する認知によりダイレクトに影響しているのだろう。

2012年12月18日火曜日

不安障害とうつ病における脳機能と脳構造に対する心理療法と薬物療法の効果の違い

Difference between effects of psychological versus pharmacological treatments on functional and morphological brain alterations in anxiety disorders and major depressive disorder: A systematic review 2012 Neuroscience and Biobehavioral Reviews
最も一般的な精神障害である不安障害と気分障害は内側前頭前野や海馬、扁桃体といった恐怖回路を含む機能的、構造的な脳の変化と関連している。これらの患者は扁桃体の過敏性と前頭葉の機能減少を示す。しかし、これらの脳の異常が治療によって低減するのかはいまだに明らかでない。このレビューは、これらの疾患における機能的、構造的な脳の指標に対する心理療法と薬物療法の効果を比較する。63の研究において、30が心理療法の効果を検討しており、33が薬物療法の効果を検討している。方法論的な違いはあるが、結果からは恐怖回路の機能的な正常化が示唆された。薬物療法は辺縁系の過活動を特に低減させるボトムアップ効果があり、心理療法は前頭皮質の特に前帯状回の活動を高めるトップダウン効果が示された。加えて、薬物療法のみ構造的な変化が伴っていた。これらの知見は、これらの治療法が異なる経路で脳の異常を正常化することを示唆している。

ざっくりしたレビューっだが、そのうちメタ分析が行われてデータから物が言えるようになることを期待している。自分でやっても良いが。

2012年11月28日水曜日

マインドフルネス:トップダウンの情動制御かボトムアップの情動制御か?

Mindfulness: Top-down or bottom-up emotion regulation strategy? 2012 Clinical Psychology Review

マインドフルネスの臨床的に有用な効果は実証的検証の指示が増えつつある。しかし、マインドフルネスの効果の背景にある神経メカニズムは完全に検証されてはいない。幾人かの著者はマインドフルネスをトップダウンの情動制御方略と記述するべきであると提案しているが、他にはボトムアップの情動制御方略と記述するべきであると提案している。この乖離はマインドフルネスの記述と適用方法の多様さに由来する。本レビューではマインドフルネスの現在のマインドフルネスの記述と、マインドフルネスと従来の情動制御方略との関係性を議論することが目的である。近年の情動制御の文脈でマインドフルネスを検討した脳機能画像研究からの結果が呈示されている。我々はマインドフルネスは短期間のトレーニングではトップダウンの情動制御と関連しており、長期間のトレーニングではボトムアップの情動制御と関連していると提案する.現在のエビデンスの限界と将来の研究についての提案議論する。

英語ネイティブが書いたもので内政か、英語が言葉足らずな気がする論文。認知療法学会でマインドフルネスの事例発表をされていた方との議論になった点がテーマになっていたので良かった.とはいえ、この点に関しては実証的な実験が少ない。

2012年11月22日木曜日

認知行動療法は全般性不安障害における恐怖の連合を解消する


Cognitive-behavior therapy resolves implicit fear associations in generalized anxiety disorder 2012 Behaviour Research and Therapy


認知スキーマ理論は不安障害は記憶と恐怖の連合と関連していると仮定する。全般生不安障害においてネガティブな心配語(例:癌)に対する潜在的なネガティブ評価を示すだけでなく、中性語(例:診断)においてもその影響が汎化することが示されている。本研究は、精神病理学的な記憶構造の指標として理解されているこのバイアスのCBTに対する感受性を評価した.extrinsic affective simon taskを用いて、全般性不安障害患者23名と健常者25名を対象に中性語とネガティブ心配語の特質との潜在的連合を測定した.患者はCBT前後にテストを行い、患者の半分は治療待機中に追加でテストを行った.臨床症状は治療前後と6ヶ月後のフォローアップで測定した。CBTは中性語に対するバイアスを正常化し、このバイアスの治療中の減少は6ヶ月後のフォローアップにおける症状の改善を予測した.さらに、治療前のバイアスはCBTに対する反応性を予測し、低いバイアスは治療集結に置ける短期的な症状の改善を予測し、高いバイアスは6ヶ月後の遅延した治療効果を予測した.中性ターゲットに対する潜在的な評価バイアスは、GADの永続的な脆弱性因子を示さなかったが、状態としての不安のレベルの高まりと関連していた.さらに、このバイアスの正常化はCBTの治療機序におけるきわめて重要な要因であることが示された.

extrinsic affective simon taskはプログラムが公開されているようだが、ダウンロードしても起動しなかった…。

2012年11月19日月曜日

感情を言葉にする:曝露療法に対する言語の寄与

多くの研究が情動にラベル付けすること、感情を言葉にすることが認知的再評価や気ぞらしのような情動制御方略の形式で情動を下降制御するために有用であることを明らかにしている。我々はこの基礎研究の知見を、クモ恐怖の曝露場面という実際の臨床場面に適用した.群間比較デザインを用いて、我々は曝露中の恐怖刺激に対する情動のラベル付け、認知的再評価、気ぞらし 、曝露のみの効果を比較した。1週間後のポストテストは異なるクモの刺激を違う文脈で呈示した。情動のラベル付けの群はSCRの減少が他の群と比較してみられ、気ぞらしよりも接近行動が見られた。しかし、主観的な恐怖は他の群と比較して異なることは無かった.加えて、曝露に置ける恐怖や不安の使用頻度は恐怖反応の低減と関連していた.よって、驚くべきことに情動のラベル付けは臨床の文脈においても情動の制御の助けとなるであろうことが示された.

情動のラベル付けによるSCRの低減が大きすぎる気がするが。とはいえ、CBTの効果は認知的再評価のような複雑な要素だけではなく、セルフモニタリングや面接を通してネガティブ情動を言語化するというごくシンプルな要素もあるということか。情動を言語化するというプロセスが情動記憶をどのように変容させるのか解明されると良いと思う.

2012年11月2日金曜日

全般性不安障害とパニック障害の情動制御遂行中の前頭皮質機能障害

Prefrontal dysfunction during emotion regulation in generalized anxiety and panic disorders. 2012 Psychological Medicine
不安障害における情動の制御障害のメカニズムはほとんど理解されていない。そこで、GADとPDにおいて情動制御遂行中の前頭皮質が不活性であることによって特徴づけられるという仮説を検証した。競合する仮説としてGADでは逆に前頭皮質が過活動であるという仮説も検証した。これは過剰なトップダウン制御を反映している。
22に人の健常者、23人のGAD患者、18人のPD患者はネガティブ画像に対する認知的再評価と維持を要求される課題を行い、fMRIの測定を行った。
GAD患者は日常生活におけるに認知的再評価の使用が最小であることが報告され、それは不安症状と機能的障害と負の相関を示した。fMRIの測定の結果から、健常者は認知的再評価と維持のいてどちらも患者らよりも前頭皮質の高い活動を示した。さらに、不安障害の患者では認知的再評価における外側前頭皮質と内側前頭皮質の活動は不安症状と機能的障害と負の相関を示した。GADとPDにおける情動制御障害は前頭皮質の活動低下の結果によってもたらされ、それはトップダウン制御の不足と一致する。前頭皮質と機能障害の相関は、情動制御における前頭皮質の失敗が高不安から不安障害への変遷の一部であることを示唆している。

自分の仮説を指示する研究だが、先を越された感は否めない。

2012年10月18日木曜日

ヒトの恐怖条件付けにおける随伴性学習は腹側線条体が関与する

Contingency learning in human fear conditioning involves the ventral striatum 2009 Human Brain Mapping

恐怖刺激とその予期手がかりの間の随伴性の検出と学習をする能力は環境に対処するための重要な機能である。随伴性の知覚は条件刺激と無条件刺激の関連性を言語化する能力と関連する。条件反応としての恐怖の随伴性の知覚の影響は議論が白熱しているが、人間の恐怖学習において随伴性の知覚の過程の形式の背後にある神経相関に対する注意はわずかにしか払われていない。近年の動物研究は腹側線条体がコの過程に関与していること示しているが、ヒトの研究において腹側線条体はポジティブ感情との関連を示すのものがほとんどである。この問題を検証するために、我々は4つの古典的恐怖条件付けの研究を随伴性知覚の3つのレベル(随伴性の知覚が無い被験者、随伴性の知覚がある被験者、教示によって随伴性の知覚を事前に得た被験者)で腹側線条体を再解析した(N=117)。結果から腹側線条体は随伴性の知覚があった被験者でより活動していたことが示された。興味深いことに教示で随伴性の知覚を得た被験者ではコの活動はみられなかった。我々は腹側線条体が随伴性の知覚を条件付けづけの時に得たか条件付けの前に得たかかということにかかわらないと予想する。腹側線条体は随伴性の知覚無しから随伴性の知覚ありへ移行する時に重要であるように考えられる。

若干古い論文だがなかなか面白い。随伴性の知覚はうつ病でも言われることだが、結果が報酬か罰かは関係なく腹側線条体は重要なようだ。

2012年10月16日火曜日

曝露療法は恐怖プロセスの神経活動の長期的な再体制化を引き起こす

Exposure therapy triggers lasting reorganization of neural fear processing 2012 PNAS
1セッションの曝露療法は、脅威となる事象に対する強固で不自由な恐怖を消去できる。我々はこの驚くべき成果の神経メカニズムを2時間の治療の結果変化した脳活動を測定することで検討した。治療の前に、脅威画像は扁桃体、島、前帯状回の活動を引き起こした。治療は、これらの恐怖感受性ネットワークの反応を減衰し、随伴して前頭前野領域の活動を高めた。6カ月後、恐怖ネットワークの活動の減衰は持続したが前頭前野の活動はみられなかった。加えて、視覚野の活動の程度の個人差は6カ月後の治療結果を予測した。この時の視覚野の活動は脅威画像に対する反応の減衰と相関していた。治療の成功は、当初の恐怖刺激に対する神経活動の再体制化の持続を伴っている。この効果は動物モデルにおいて同定されている恐怖-消去メカニズムとリンクしており、不安障害の治療と予防の新たな展開を導くものである。

非常にチャレンジングな研究である。脳は環境と生体の相互作用のインターフェースとなる基盤である。恐怖や消去のメカニズムは、動物モデルや人体における神経メカニズムの解明によって、将来治療法の開発が大きく進むと考える。つまり、恐怖の消去は脳の機能を変えることであり、その脳の機能を変えるための非侵襲的治療として従来の曝露療法以上の技術がでてくるだろう。技術としてNeurofeedbackが使えるかもしれないし、Schiller et al 2010のような恐怖記憶の再固定化を妨害する方法が臨床応用できるようになるかもしれない。本当にそうなれば良いのだけれど。

2012年9月24日月曜日

再固定化の妨害によるヒトの扁桃体における恐怖記憶の痕跡の削除

Disruption of reconsolidation erases a fear memory trace in the human amygdala. 2012 Science

記憶は側きされると不安定になる。ヒトとげっ歯類は同様に、再活性化された恐怖記憶は消去訓練に伴う再固定化の妨害によって減少する。fMRIを用いて我々は条件付けされた恐怖記憶が固定された後に、恐怖表出を予測する扁桃体外側基底に再活性化と再固定化が残した恐怖痕跡と、それが脳の恐怖回路における活動と連合していることを見出した。対照的に再活性化に後続した再固定化の妨害によって恐怖が抑制され、記憶痕跡の消失と恐怖回路のコネクションの減少がみられた。よって、げっ歯類によって示されてきたように、恐怖記憶の良く性が再固定化の行動的な妨害の結果であり、ヒトの扁桃体に依存したものであることは、進化に伴って保持されてきた記憶更新メカニズムであることを支持している。

おととしのSchiller et al 2010をfMRIによって追試した論文。やはりこういう先端かつCBTの根幹となるメカニズムに迫る研究には大きな魅力を感じる。

2012年8月28日火曜日

恐怖学習におけるセロトニンの影響

The influence of serotonin on fear learning 2012 PLoS once

嫌悪刺激とそれを予測する手がかりの間の連合学習は古典的恐怖条件付けの基盤であり、予測と結果の間のミスマッチによって駆動する。セロトニンが嫌悪的手がかりと結果の連合を調整するかを検討するために、我々はfMRIと健常者において脳のセロトニンレベルを低下させるトリプトファン欠乏食を用いた。古典的恐怖条件付けパラダイムにおいて、5HT欠乏の被験者は欠乏していないコントロールと比較して嫌悪事象の東大に対する自律反応が減少した。これらの結果は恐怖の神経回路の強固な構造である扁桃体と眼窩前頭皮質の嫌悪学習の信号減少と並行していた。恐怖学習においてセロトニンがドーパミンに対する反対の動機付けシステムであるという現在の主張と一致して、我々のデータは嫌悪事象に対する学習信号の表象にセロトニンが役割を果たす最初の実証的証拠を提示した。

セロトニン欠乏が恐怖条件付けに対する感受性を低下させるとは知らなかった。強化学習モデルに基づくと、セロトニンは嫌悪事象の予測と結果の誤差を調整する変数であり、ドーパミンのような報酬事象の予測と結果の誤差を調整する変数とは対照的らしい。つまり、セロトニン欠乏は嫌悪事象の予測と結果の誤差を調整することを困難にさせるため、恐怖条件付けにおける連合学習を低下させるようだ。

2012年8月20日月曜日

マインドフルネストレーニングは老年期の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減する:小規模な無作為統制試験

Mindfulness-Based stress reduction training reduces loneliness and pro-inflammatory gene expression in older adults: A small randomized controlled trial. 2012 Brain, Behavior, and Immunity

孤独な老人は炎症誘発性遺伝子の発現が増加しており、病気の罹患と寿命のリスクが増大している。以前からの行動的介入は孤独とその健康に対するリスクを低減しようと試みている。本研究では、8週間のマインドフルネスプログラムがウェイティングリストと比較して、老人の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減するかを検討した。予測と一致して、マインドフルネスプログラムは孤独を低減した。さらに、ベースラインにおいて孤独と炎症誘発性のNF-kB関連遺伝子の発現上昇が関連し、マインドフルネスはこの遺伝子発現を減少させた。そして、マインドフルネスはCRPを減少させる傾向がみらられた。本研究はマインドフルネスが老年期の孤独と炎症誘発性遺伝子の発現を低減する新しい治療であることを初めて示した。

心理的介入が健康を改善するメカニズムの中に炎症誘発性遺伝子の発現現象が媒介変数になっている可能性を示している。孤独という構成概念が炎症誘発性遺伝子の発現と関連していることを本当は前提としてはっきりさせなければならないのだろうが・・・。

2012年8月6日月曜日

うつ病における恐怖表情ではなく悲しみ表情に対する扁桃体の反応増加:気分状態と薬物療法との関連

Increased Amygdala Responses to Sad But Not Fearful Faces in Major Depression: Relation to Mood State and Pharmacological Treatment 2012 American Journal of Psychiatry

ネガティブ情動に対する扁桃体の反応増加は、うつ症状の背景にあるネガティブ情動処理のバイオマーカーでうつ病の再発の脆弱性であり薬物療法によって正常化する。本研究の目的はうつ病における顔表情に対する異常な扁桃体の反応が情動特異的であるか、また薬物療法によって変化するか、あるいは薬物療法を終えた寛解うつ病において特性として残存するかを検討することである。62人の治療なしのうつ病患者(38人が現在のうつ病、24名が寛解)と54人の健常対象者は間接的顔表情処理課題を行い、fMRI測定を行った。32人の現在のうつ病患者はシタロプラムで8週間治療を受けた。治療のアドヒアランスは血清中のシタロプラム濃度で管理した。現在のうつ病患者は健常者や寛解患者に比べて悲しみ表情に対する扁桃体の反応増加がみられた。シタロプラムは悲しみ表情に対する扁桃体の反応を根絶したが、恐怖表情に対する反応は変化しなかった。悲しみ表情に対する異常な扁桃体の反応はうつ状態に特異的であり、うつ病エピソード中のネガティブ情動バイアスの潜在的なバイオマーカーであると考えられる。

event-related designではなくblock designの顔表情課題で扁桃体の賦活を見た研究は珍しい。blockで良いなら楽な話だが・・・。

2012年8月3日金曜日

不安における適応的な脅威バイアス:扁桃体-背内側前頭前野の結合性と嫌悪の増強

The adaptive threat bias in anxiety: Amygdala-dorsomedial prefrontal cortex coupling and aversive amplification 2012 Neuroimage

機能的観点では、不安は嫌悪刺激に対するヴィジランスを増大し、危険を探知して回避する能力を向上させる。たとえば、我々が最近見出したように健常者において不安は嫌悪刺激の検出と防衛反応を誘発する。これは不安の適応的な機能であることはほぼ間違いないが、この情動特定的な効果の神経回路は明らかになっていない。本研究では、背内側前頭前野と帯状回はげっ歯類の前辺縁系と相同しており、これらの領域の働きが不安による適応的な脅威バイアスにおける返答たいの反応の増大と関連しているという仮説のエビデンスを示す。このために、我々は健常者において恐怖顔刺激と幸福顔刺激の同定中に電気ショックを与えることで新たな機能的結合性の解析を適用した。この効果は幸福顔刺激においてはみられない情動特異的な効果であり、恐怖顔刺激に対する行動反応の速さと並行しており、特性不安と正の相関があった。我々の最初の実験で示されたように、不安によって媒介され、情動特異的で、背内側前頭前野-扁桃体の嫌悪反応の増大するメカニズムが示された。これはげっ歯類の前辺縁系-扁桃体の回路と相同回路であり、特性不安との関連が示されていることから、不安障害の脆弱性の基盤であると考えられる。本研究は、適応的な不安の重要な神経メカニズムを指摘するものであり、非機能的な不安に潜在的なつながりを示すものである。

自分の研究ではネガティブ刺激の処理に背内側前頭前野と扁桃体の結合性が示されていた。背内側前頭前野と扁桃体のサーキットはネガティブな情動処理の亢進に関わると考えていたことは間違いではなかったようだ。

2012年7月27日金曜日

不安障害と大うつ病性障害の自動性

Automaticirt in Anxiety Disorders and Major Depressive Disorder 2012 Clinical Psychology Review

本論文では不安障害とうつ病の自動的な認知過程の性質を検討した。自動性を統合された構成概念としてよりも、我々は自動性を4つの理論的に独立した特徴として議論した社会認知理論(Bargh 1994)に追随することにした。4つの特徴とは無意識(意識外の情動刺激の処理)、効率性(最小の注意資源による情動の処理)、無意図(情動処理において目的が必要とされない)、制御不可(情動刺激の処理の回避、変化、根絶する能力の制限) である。我々の文献のレビューではほとんどの不安障害は制御困難、無意識、無意図の脅威刺激バイアスの特徴がみられた。対照的に、うつ病はネガティブな情報処理の制御困難によってほとんど類型化されることが示唆された。不安障害とうつ病においては効率性に関して結論を下すだけの十分な根拠はないが、どちらも効率性によっては特徴づけられないことが示唆されている。これらの知見の臨床的、理論的示唆は将来の研究によって議論されるだろう。特に、より直接的に自動性の異なる特徴を表すパラダイムが、情動の制御障害における自動的処理の重要性を包括的かつ体系的な理解を得るために必要とされていることは明白である。

メタアナリシスでもしているのかと思ったがそうではなく、文献レビューだった。しかし、両者ともに情動の制御困難が共通しており、 自分の研究の方向性と一致する。認知の変容は認知の内容ではなく、アプローチの仕方を変えることが大事だと思う。

2012年7月25日水曜日

嫌悪事象の予期の分解は神経ネットワークの分離を明らかにする

Dissecting the Anticipation of Aversion Reveals Dissociable Neural Networks 2012 Cerebral Cortex

未来の嫌悪事象の予期は、準備メカニズムを駆動することによって適応的な利益をもたらすが、この過程は過度に働くと害にもなりうる。神経科学的な検討は予期を統合的な過程として扱っているが、本研究ではfMRIを用いて我々は分離した神経メカニズムによって支持される嫌悪事象の予期の別々のステージを示す。即時的な予期反応は、不安が高い被験者において脅威検出や手がかり刺激の早期過程と関連する眼窩前頭皮質や前帯状回尾側部、扁桃体といった領域と関連していた。持続的な予期活動は、分界条床核、島、前帯状回、中脳灰白質などの不安や、内受容感覚、防御行動に関連した領域と関連していた。前帯状回は中脳と機能的に結合しており、嫌悪事象の持続的な予期において恐怖反応の表出にこれらの回路が関与していることが示唆された。これらのデータは予期における異なる時間的なステージに異なる領域が関与することを示唆しており、人間の脳がどのように未来に適応的、もしくは非適応的に直面するかについての示唆を与えるものである。

2012年7月19日木曜日

精神医学における治療効果の脳機能画像研究:方法論的挑戦と推奨される方法

Functional neuroimaging of treatment effects in psychiatry: Methodological challenges and recommendations. 2012 The International Journal of Neuroscience

fMRIは、脳機能における症候と関連した異常を特定することによって精神障害や神経発達的障害の神経生理学的基盤を解明するために有用である。また、fMRIはうつ病や不安障害、統合失調症や自閉症などの精神障害や神経発達的障害に対する治療の作用機序に理解に大いに期待できる方法である。しかし、精神疾患における治療効果の検討にfMRIを使用することはfMRIを繰り返し測定することの性質や症状に対する介入の効果と特定の脳活動に対する治療効果の間の関連性をどう評価するか、そして脳機能に対する介入の効果について最も良い因果関係の推論をするにはどうすれば良いか、といった特殊な方法論的なポイントがある。加えて、神経発達的障害に対する治療効果の検討は、脳の成熟、解析手法、モーションによるノイズの可能性といったさらに特殊な問題をもたらす。我々はこれらの方法論的な問題のレビューとこれらのトピックに対する最も良い実践の推奨方法を提供する。

 ・複数回fMRIを行うことの問題
fMRIの再テスト信頼性は高いという報告と低いという報告がある。
・推奨される方法
マルチセンターMRIでMRI装置の特性を相殺すること。非臨床サンプルで再テスト信頼性を検証したのちに臨床サンプルで実施すること。

・fMRIで使用する認知課題の選択についての問題
今のところ治療効果を検討するためのGold standardな課題は存在しない
・推奨される方法
大規模なワーキンググループを作って様々な認知課題の信頼性や妥当性を検証すること。CNTRACSでは統合失調症を対象に認知課題の検証を重ねている。

・対照方法の選定の問題
検討したい介入の効果には、対照方法のデザインによって要求バイアスやプラセボ効果などの様々な剰余変数が混在してしまう。
・推奨される方法
ウェイティングリストやプラセボ、2種類以上の治療への無作為割り付けが最も望ましい。

・fMRIの定量性についての問題
fMRIの多くはBOLD信号を計測している、BOLDは脳活動の相対値であり絶対値ではない
・推奨される方法
時間分解能が気にならなければPerfusionやASLなどの撮像方法を用いるべき。

・治療と症候の関連についての問題
アスピリンによって筋肉痛は和らぐが、筋肉痛の原因はアスピリンの欠如ではない。これと同様に治療による症候の変化が病態や治療効果と直結しているとは限らない。
・ 推奨される方法
理論的な整合性と補強するデータを継続すること。また、治療によって完全に寛解した状態を対照群と比較することや特性の変化を調べるために脳活動が治療によって正常化した群と疾患のハイリスク群を比較すること。

・治療の効果と脳活動の変化の不一致の問題
 治療介入は全ての患者に有効ではないことを踏まえると、症状の改善がみられても脳活動に変化が無い場合やその逆の場合が起こりうることは留意すべきである。
・推奨される方法
十分に効果が実証されている治療介入を用いること。また、何の指標をもちいて主要な結果とするかを事前に考慮すること。

・治療反応の不均一性
治療効果は不均一であり、脳活動との関連を検討する上で問題がある。
・ 推奨される方法
サンプルサイズの問題はあるが、反応群と非反応群を比較すること。あるいは治療反応を連続量
として脳活動との関連を検討すること。

・fMRI課題のパフォーマンスに対する治療効果の問題
治療介入が課題のパフォーマンスに影響する場合、パフォーマンスを共変量に入れると脳活動への治療の影響を検出しにくくなる。
・推奨される方法
治療介入が課題のパフォーマンスに影響しないとみなされる場合は、共変量にパフォーマンスを入れること。

・過度なモーションの影響
基本的にBOLD信号の変化は課題よりも動きの影響を受けやすい。また、MRI装置内で静止することは患者にとって困難である。
・推奨される方法
バイトバーやフェイスマスクなど可能な拘束方法をとること。また、MRI装置のモックサンプルで慣れさせておくのも良い。

・治療効果に対する発達の影響
介入の効果や、課題のパフォーマンス、脳活動が乖離しているのと同様に、児童の場合は発達の問題も混在してしまう。
・推奨される方法
成人で検討したうえで児童に適用する。

・脳構造の違いについての問題
自閉症などの発達障害は健常人と比較して脳構造に違いがある。この違いは脳活動にも大きく影響する。
・推奨される方法
脳構造を標準化することが必要。

・児童の脳構造の問題
児童の脳は成人とは構造が異なる。このため成人の標準脳をテンプレートにすることに問題が生じる。
・推奨される方法
7歳以上では成人の標準脳で適切に標準化されるという報告もある。しかし、既存の児童の点標準脳のテンプレートを用いる方が適切である。

まあ、基本的な問題と解決方法である。別に治療介入に関する脳機能画像研究でなくてもほとんど共通する注意事項。きちんと覚えておく必要はあるが。

2012年7月18日水曜日

ボトムアップとトップダウンの感情生成:感情制御への示唆

Bottom-up and top-down emotion generation: implications for emotion regulation. 2012 Social Cognitive and Affective Neuroscience.
感情制御は適応的機能において重要な役割を持ち、蓄積された知見からは情動制御方略によっては他のものよりも有効であることが示唆されている。しかし、ボトムアップ(刺激の知覚的な特性に対する生得的な反応)とトップダウン(認知的評価に対する反応)の異なる情動生成の方略についてはほとんど注意がはらわれていない。プライミングの原則に基づいて、我々は情動制御のモードは情動制御に後続と交互作用すると予測した。特に、我々はトップダウンの情動生成はトップダウンの制御方略を用いる方がボトムアップの情動制御を行うよりも有効であると予測した。この仮説を検証するために、我々はボトムアップとトップダウンの情動を生成して被験者に認知的再評価によってその情動を低減するように教示した。我々はた情動反応の2つの尺度において生成と制御の予測された交互作用を見出した。自己報告の感情の測定ではボトムアップの情動の生成よりもトップダウンの情動生成においてより認知的再評価が成功した。神経活動は、ボトムアップ情動生成の認知的再評価は逆説的な扁桃体の活動増加がみられた。この高度作用は情動生成のモードと後続する情動制御の交互作用が情動制御の様々なタイプの効果を比較するときに考慮すべきであり、同様に異なる臨床的な障害に介入する時に認知的再評価を用いるときも同様に考慮すべきである。

情動反応が生じる過程によって情動制御方略の有効性が異なり、神経活動にも反映されるという個人的に大きなインパクトがある論文だった。恐怖のようなボトムアップの情動と反芻のようなトップダウン的に生成される情動では、効果的な情動制御方略が異なるのだろう。これは臨床場面においても重要な問題であると思うが、トップダウンの情動とボトムアップの情動を同列に扱うことは困難だとも考える。主観的な情動反応はトップダウンの方が大きいが、末梢の生理反応でも調べてみたいところ。

2012年7月14日土曜日

Voodoo的相関はいたるところにある-神経科学のみならず

Voodoo correlations are everywhere-Not only in Neuroscience. 2011 Perspectives on Psychological Science

Perspectives on Psychological Scienceにおいてある一点(voxel)で測定された脳の指標と行動尺度の誇張された相関に関するた最近の一連の論文は、尺度との相関を最大化するような選択の仕方に慎重になるように議論している。しかし、さらなる精査はこの問題は神経科学においてだけではなく、全ての研究パラダイムにおける広範な方法論的問題であることを空きrか兄した。研究者は相関がインフレするvoxelを選ぶだけではなく、刺激の選択や課題、条件の設定、従属変数や独立変数、治療、調整変数、媒介変数、など様々なパラメーターを同様に実証的データを見栄えを良くして安定させるために選択している。全般的に、パラダイムとは理想的でインフレ下効果を生み出すための常套的な設定として理解されうる。デザインの実現可能性は制限されるが、真実に迫るための修正は研究パラダイムを効果量を強く鮮明にすることから妥当性と科学的精査へと新しい方向付けをすることにある。

若干speculationに基く批判も含まれているが、実験デザインを考えるときに心がけておく必要のあることをいくつか学べた。

2012年7月11日水曜日

科学文献の検索:量的、質的レビューにおける示唆

Searching the scientific literature: implication for quantitative and qualitative reviews. 2012 Clinical Psychology Review
文献のレビューは研究の過程において不可欠なステップであり、全ての実証論文とレビュー論文に含まれているものである。電子データベースはこのような文献を集めるために広く用いられている。しかし、いくつかの要因は関連した文献が検索される範囲に影響を及ぼすことがあり、それは将来の研究や結論にも影響する。今回の研究は検索方略を計画する時に考慮すべき要因を示すためにあるひな形を用いて2つのアーカイブにおける検索方略によって得られた論文を検証した。特に論文の検索は、PsychINFOとPubMedにおいて双極性障害とADHDという障害を2つのひな形としてこれらの診断分類に関するレビュー論文に焦点を当てて行われた。論文は内容の関連性や特徴によってコーディングした。2つの検索エンジンからは全体的にも2つの障害によっても関連論文の割合が大きく異なっていた。関連論文において検索エンジン間のキーワードの違いが同定された。これらの結果に基いてレビュー論文のために文献を収集する際には複数の検索エンジンと構文と特定のエンジンの適正に応じた方略を用いることが推奨される。メタ分析と系統的レビューにおいては著者はレビューのために異なるアーカイブやソースの範囲を報告することを考慮した方が良いだろう。

検索エンジンごとに結果がかなり違うことは経験的には分かっていたが、データで示されると説得力がある。検索分野によってもかなり変わりそうだが。

2012年7月4日水曜日

大うつ病性障害患者の脳構造画像によるマルチセンター診断分類

この数十年の間にうつ病患者の脳構造の量的な異常が報告されてきた。しかし、これらの構造の違いは被験者間の分散を考慮して慣習的な放射線医学的に定義された異常における微妙な差異を示すのみである。結果的に、個人レベルにおいてうつ病患者を脳構造画像から同定することはできていない。近年、関連ベクターマシンやサポートベクターマシンなどの機械学習を個人の画像から分類を予測するために適用されている。そこで我々は新規のハイブリッドな技法を開発し、特徴抽出と特徴づけを一体化した機械学習を述べ、後者の特徴付けは機械学習による予測の精度を高めるためである。この方法は複数の施設から得たT1構造画像のデータで検証した。62人のうつ病患者と対照健常群をアバディーンとエジンバラからリクルートした。90%程度の高い精度の分類ができた。一方で特徴中週るが機械学習において精度を高めるために重要であったのにたいして、特徴付けは関連ベクターマシンによる分類の精度にわずかに貢献しただけであった。注目すべきことは、訓練時にうつ病と健常者という分類ラベルしか与えていないにもかかわらず、関連ベクターマシンとサポートベクターマシンの重みづけは主観的な症状の重症度と相関していた。これらの結果は機械学習によって個人の脳画像から正確な予測を行うことができる可能性を示唆した。さらに、機械学習の脳構造画像の情報をもとにした重みづけはうつ病の症状の重症度のバイオマーカーとなるだろう。

英語能力が低いせいもあるが読みづらい文章である。それはともかくとして機械学習で用いるweightが何かしら使える指標になりうる可能性が分かったのは良かった。ただ、やはり辺縁系はうつ病の分類においてあまり特徴として有用ではないことがこの論文からも示唆される。

2012年6月19日火曜日

情動障害の汎診断的統合プロトコルの結果予測におけるネガティブ情動の役割と情動に対するネガティブな反応の役割

The role of negative affectivity and negative reactivity to emotions in predicting outcomes in the unified protocol for the transdiagnostic treatment of emotional disorders. 2012 Behaviour Research and Therapy
本研究の目的は、ネガティブ情動の体験に関する特性的傾向とネガティブ情動の体験に対してどのように関わるかということが情動障害の汎診断的統合プロトコルの(UP)症状変化の予測にどのように寄与するかを理解することである。データはRCTにおけるUP群とWT群から得られた。最初に、ネガティブ情動の頻度と情動体験に対する反応性に関するいくつかの変数(感情への気づきと受容、情動への恐怖、不安感受性)の治療前後の変化の効果量を検討した。次に、ネガティブ情動と情動反応の変化の症状(臨床的な不安、抑うつ、主診断の重症度)の減少に対する相対的な寄与を検討した。結果からは、ネガティブ情動の頻度と情動に対する反応性はどちらもUP群において大きな減少を示した。さらに、情動に対する反応性の2つの変数(情動に対する恐怖と不安感受性)はネガティブ情動を調整したうえで症状の変化と関連しており、症状改善の分散を説明した。これらの知見は心理的な健康は、ネガティブ情動の頻度ではなく情動が生じたときにそれらに対してどのように関わるかということにより依存することを示唆している。

被験者数が37人しかおらず、各診断に含まれる被験者も少ないので小規模な研究だが、ネガティブ情動の頻度ではなく、それらに対する個人の反応性が重要であるという論には賛同できる。acceptanceも被験者数が増えれば症状の変化と関連すると思われる。

2012年6月16日土曜日

うつ病における情動ネットワークのリアルタイム自己制御

Real-time self-regulation of emotion networks in patients with depression. 2012 PLoS one

多くのうつ病患者は薬物療法にも心理療法にも反応しないことが知られている。本研究では、fMRIによるニューロフィードバックを通した心理学的アプローチと神経生物学的アプローチを統合した新しい脳の自己制御技法の実現可能性を検討した。8人のうつ病患者は、ニューロフィードバックのセッションを通してポジティブ情動の生成にかかわる腹側前頭前野と島の制御を学習した。被験者の臨床症状はハミルトン抑うつ尺度で測定され、有意に改善した。ニューロフィードバックを行わない同様の認知方略のトレーニングを受けたコントロールグループでは同様の効果は得られなかった。ニューロフィードバックがうつ病の治療に有用になりうるかどうかを決定しプラセボ効果を除外するために無作為割り付け盲検試験が必要である。

内容は非常にチャレンジングだが、抑うつ症状が軽症レベルの被験者なのでニューロフィードバックに耐えうる患者しか適用できないだろう。ポジティブ情動にかかわる領域をポジティブなイメージを喚起することで活動させているため、被験者への負荷は大きい。もっとエフォートが少ないやりかたが開発できればと思うが・・・。

2012年5月25日金曜日

認知行動療法は慢性疼痛患者における疼痛と関連した前頭皮質の活動を増加させる

Treatment with cognitive behavioral therapy increases pain-evoked activation of the prefrontal cortex in patients suffering from chronic pain. 2012 PAIN

認知行動療法をベースにした介入は慢性疼痛に広く適用されているが、これらの治療の脳内メカニズムはほとんど理解されていない。本研究の目的は、慢性疼痛患者における曝露ベースの認知行動療法、ACTによる皮質コントロール理論の関連を検証することである。43人の女性の線維筋痛症の患者が12週間のCBT(25名)とウェイティングリスト(18名)に無作為割り付けした。CBTは12週間の1グループ6人構成のセッションで行われた。圧力によって喚起される疼痛の際のfMRIを12週間の治療前後で測定した。抑うつと不安の自己報告質問紙を治療前後と3カ月後のフォローアップで行った。CBTを受けた患者はPatient Groval Impression of Change measureにおいて線維筋痛症の大きな改善と抑うつと不安の改善がウェイティングリストと比較して見られた。しかし、臨床的な疼痛と疼痛感受性の尺度には効果が無かった。fMRIの解析からはCBTは腹側前頭前野、外側眼窩前皮質などの認知遂行機能にかかわる領域の活動増加を導いた。我々は認知行動療法が疼痛のシグナル、情動や認知といった疼痛に対する評価の遂行にかかわる機能の増加を導く皮質ループの変化を通して疼痛の脳内処理を変容したと考える。我々にデータは慢性疼痛に対するCBTに反応して皮質のコントロールメカニズムが活性するという仮説を支持するものである。

 おそらくAcceptance and Commitment therapyの脳画像研究としては初めての論文だろう。疼痛の感覚自体には効果が無いということから一般的なpain matrixの活動の変化はみられていない。疼痛刺激の呈示の仕方が圧力に基くものというのはどうかと思うが。もっとシステマティックに呈示する方法はたくさんある。

2012年5月24日木曜日

寛解うつ病における情動制御の欠落:制御方略、方略使用の習慣、そして情動価の影響



Neural correlates of emotion regulation deficits in remitted depression: The influence of regulation strategy, habitual regulation use, and emotional valence. 2012 Neuroimage


認知的再評価を通して情動制御はうつ病患者において異常な神経活動のパターンを喚起することが示されている。しかし、この欠落が他の情動制御方略に一般化されるか、患者が回復しても残存するのか、情動制御の習慣的使用と関連しているのかは明らかになっていない。そこで、我々はfMRIにおいて情動画像に対する神経活動を寛解うつ病患者と健常者に行った。画像を見ているときに被験者は喚起された情動を認知的再評価か気ぞらしのどちらかをもちいて制御した。習慣的な認知的再評価の使用はCognitive Emotion Regulation Questionnaireを用いて測定した。うつ病患者はネガティブ情動刺激に認知的再評価を行うときの扁桃体の活動のダウンレギュレーションが欠落していた。この扁桃体のダウンレギュレーションは認知的再評価を高頻度で用いる被験者において最も強固であった。前帯状回や外側眼窩前皮質を父君んだ制御ネットワークの活動はどちらの情動制御方略においても増大した。寛解うつ病患者におけるこの知見は、情動制御の変化はうつ病の特性マーカーであることが示唆された。この解釈は習慣的な認知的再評価の使用が扁桃体のダウンレギュレーションの達成と関連していることによって支持される。


非常に良いデザインの研究。目的も方法もレベルが高いが、唯一画像解析の方法があまり良くない。結果からは扁桃体の活動はpassive viewingでは群間差が見られなかったようだが、これは情動刺激に体する扁桃体の活動はtraitではなくstateであることを示唆している。確かに他の画像研究を見ても治療を行えばネガティブ刺激に体する扁桃体の活動は全般的に低下するという結果である。しかし、認知的再評価における扁桃体の活動の異常は寛解しても残るのであればネガティブ刺激に対する反応と異なり、traitとして残存するということだろう。

2012年5月23日水曜日

抑うつリアリズム:メタ分析的レビュー

Depressive realism: A meta-analytic review 2012 Clinical Psychology Review

本研究は抑うつリアリズムの最初のメタ分析の報告である。本論文では75の関連研究と7305人の被験者を検索した。結果からは、全体的に小さな抑うつリアリズムの効果(d=-.07)を示した。しかし、抑うつ気分と抑うつの被験者(d=.14)と非抑うつ気分と非抑うつの被験者(d=.29)両方で強固なポジティブバイアスが示されて、このバイアスは非抑うつ気分と非抑うつの被験者でより大きかった。潜在的な媒介変数の検討からは客観的なリアリティの基準が欠如している研究(d=-.15:基準のあるものではd=-.04)と抑うつ症上の測定を自己報告式にしている研究(d=.16:構造面接を用いているものではd=-.04)はより抑うつリアリズムが顕著に現れた。方法論的なパラダイムもまた抑うつリアリズムの一貫性に影響していること(d=-.09~14)が示された。

抑うつリアリズムは教科書に載っているほど強固な現象ではないようだ。リアリティの指標は絶対的な基準と相対的な基準両方を測定する必要がある。

2012年5月15日火曜日

人間における都市生活と都会化による神経社会ストレスの過程

City living and urban upbringing affect nerual social stress processing in humans 2011 Nature

昨日Nature neuroscienceの特集でsocial neuroscienceを扱っていたので、そこのレビューから見つけた。Natureは日本語要約があるので自分で作るのはやめた。Urbanicity scoreの算出方法が分かったらこれから先データをとっておこうと思う。社会的ストレスの定義や操作は簡単ではないが、神経基盤への影響はかなり大きく、精神疾患との関わりも深いことが示唆される研究と感じた。

2012年5月14日月曜日

精神疾患における社会的リスクに関する神経メカニズム

Neural mechanisms of social risk for psychiatric disorders 2012 nature neuroscience

精神的健康と社会生活は密接に相互作用しており、精神疾患において頻繁に社会的障害がみられ、劣悪な社会環境に曝露された人の精神障害の罹患率の増加からもそれが裏づけられている。ここでは、我々は精神疾患の社会的なリスク要因の神経メカニズムを焦点に当てるために疫学と社会心理学と神経科学の知見をレビューする。その際に、我々は社会的神経回路における一般的な遺伝的リスク要因の影響について議論し、脳における社会環境と遺伝的リスクのメカニズムを同定するために統合的なアプローチが必要であることを述べる。


2012年5月1日火曜日

実験薬理モデルを用いた抑うつと不安に対する薬物療法と認知的介入の併用効果の検討

Using an experimental medicine model to explore combination effects of pharmacological and cognitive interventions for depression and anxiety. 2011 Neuropsychopharmacology.

SSRIと認知療法は抑うつと不安に対して有効である。先行研究からはこれらの治療法は情動情報の処理における認知バイアスを変容することによって作動すると示唆されている。本研究ではSSRIと認知的介入の併用効果を情動バイアスと外的操作に対する抵抗性を測度として検討した。62人の健常者は7日間のシタロプラムかプラセボに割り付けられ、さらに認知バイアスのコンピュータートレーニングのアクティブ群とコントロール群に割り付けられた。治療後において、標準化された情動処理バイアスの測度を得た。 被験者の外的ストレスに対する抵抗性はネガティブ気分誘導によって生じるネガティブ気分によって測定した。シタロプラムと認知バイアストレーニングの両方を受けた被験者はそれぞれ単独の治療を受けた群よりも情動記憶と分類バイアスの変化が少なかった。シタロプラムを受けた情動情報の記憶の程度は、被験者の気分誘導に対する抵抗性を予測した。これらの結果はSSRIと認知トレーニングの併用は不安やうつ病に関連した情動処理において単独治療の効果を減退させる可能性を示唆した。さらに言えば、これらの知見は治療の認知的変化に焦点を当てることで、精神的健康における治療方略の併用の発展を示唆するものであろう。

意外にも併用はあまり効果が無いようだ。うつ病ではないし、アナログでも無いので、確定的なことは言えないが。 どういう認知訓練が併用効果があるのか、薬物療法の作用機序との関連が明らかになっていくと良いと思う。

2012年4月25日水曜日

情動制御の選択

Emotion-Regulation Choice 2011 Psychological Science
情動をどのように制御するのかという何百年もの憶測があるにもかかわらず、異なる強度のネガティブな状況にさらされたときに人間がどの情動制御方略を選択するのかは実際には分かっていない。情動制御の過程についての新たな概念に基づいて、我々は低強度のネガティブ状況において人間は再評価によって情動を制御することを選択する傾向があると予測した。しかし、高強度のネガティブ状況においては情動処理の早期に行われる気逸らしを用いて情動制御することを選好すると予測した。3つの条件において情動画像を用いた異なる強度の文脈と予測不可能な電気刺激の文脈を作成した。これらの情動文脈に反応して、被験者は再評価と気逸らしを選択した。結果からは、仮説がすべて指示された。このような情動制御方略の選択パターンは健康的な適応の理解において重要な示唆を示している。

短い論文であり、実験もシンプルだが情動制御の過程において個人の方略の選択が状況によって異なることを明快に説明している。ただ、実際に選んだ方略がどのように有効だったのか、末梢生理反応への影響はどうだったのか、選択に影響する個人差はなかったのかという点が気になるところだ。おそらく調べていると思うが。

2012年4月23日月曜日

未治療のうつ病における報酬と罰の逆転学習の腹側線条体の反応

Ventral striatum response during reward and punishment reversal learning in unmedicated major depressive disorder 2012 American Journal of Psychiatry

情動バイアスはうつ病の多くの症状の基盤にあり、アンヘドニアから認知的パフォーマンスに変化する。これらのバイアスの原因を理解することは、治療法の改善にとって非常に重要である。例えば、うつ病は逆転学習におけるネガティブな情動バイアスと関連する。しかし、逆転学習が健常者において線条体の反応を生じさせ、うつ病において様々な課題で線条体の反応が減少しているという事実があるにも関わらず、逆転学習におけるネガティブバイアスに関連したうつ病患者の線条体の関与は検討されていない。本研究では、このことが、予期されない罰の基盤となる逆転を検討する行動の研究のために通常用いられる逆転学習課題によって報酬と罰行動を適切に分類できないために生じる現象かどうかを検討することにした。報酬と罰の逆転が混在した逆転学習課題においてうつ病患者と健常者の脳機能の比較を行った。うつ病において予期されない報酬に対する前部腹側線条体の活動減少が、報酬の逆転に対する正確性の減少とともに示された。前部腹側線条体の神経心理的反応の減少は、眼窩前皮質、辺縁系、ドーパミン経路の求心性のサーキットの機能障害を反映しており、うつ病におけるアンヘドニアと関連している。喜びや楽しみの体験を学習することはうつ病の回復に重要である。本研究はそのような回復の神経ターゲットを正確に示した。

うつ病において一貫して観察されるのは報酬への感受性の低下のようだ。

2012年4月18日水曜日

セロトニン1AレセプターによるDMNの異なる調節

Differential modulation of the default mode network via serotonin-1A receptors 2012 PNAS

 自身の心的状態について考えを巡らすことは、生活上のイベントの自己関与度を評価したり、モラル的判断をしたり、将来を予想するための根源的な過程である。これらに関与するするデフォルトモードネットワーク(DMN)に対する関心は高まっているが、DMNの神経化学的メカニズムは知られていない。この研究ではPETとfMRIを組み合わせて5HT1AによるDMNへの調節を検討した。2つの独立したアプローチを用いて、安静時とTOL課題遂行時の膨大後部皮質の活動と局所的5HT1Aの密度が関連していることが明らかになった。一方で、5HT1Aのローカルなものと自己抑制能のものは後部帯状皮質と負の相関を示した。DMNの前頭部分は背内側前頭前野と負の相関を示した。これらの結果は、自己関連処理に関わるこれらの領域の調節がセロトニン系の神経伝達によってもたらされることを示し、5HT1AのバリエーションがDMNの活動における個人差をある程度説明することを示した。さらに、内受容的機能に関わる脳領域はとくに5HT1Aによって制御されていると考えられる。先行研究においてドーパミンやGABAの制御が報告されていることを合わせると、この局所的な特定性はDMNを駆動する複数の神経伝達物質の複雑な相互作用を示唆している。

業務上読まざるを得なかった論文だが、DMNの活動の個人差が神経伝達物質によって調節されるということは興味深い。今後はそういう方向の研究が増えそうだが、モノアミン系の神経伝達物質の機能だけでなくそれらと関わるような心理的活動とDMNがどのような相互作用を示すのかという点も研究材料になりそうだ。

2012年4月13日金曜日

アクセプタンスはどのような効果があるのか?実験研究のメタアナリシスレビュー

How effective are acceptance strategies? A meta-analytic review of experimental results. 2012 Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry

心理的アクセプタンスに関する実験的研究からはアクセプタンスが他の情動制御方略より優れているということに関して一致しない結果が示されている。アクセプタンスとその他の情動制御方略の実験的比較の結果について検討したレビューが欠けている。本論文ではそのギャップをメタアナリシスによって埋めることを目的とした。30の関連した研究を同定した。多くの研究からはアクセプタンスが疼痛の認容性、ネガティブ情動、思考の確信度において他の情動制御よりも優れていると報告している。メタ分析の結果は疼痛の認容性に関する知見を再現した。アクセプタンスは小から中程度の効果量を示した。疼痛の強度と情動に関してはメタアナリシスからはアクセプタンスと他の情動制御方略の間に有意差はみられなかった。要約すると、アクセプタンスは疼痛の認容性に関しては他の情動制御より優れていることが示された。将来の研究においてはアクセプタンスや他の情動制御方略に反応する被験者の個人差について検討するべきであろう。アクセプタンスは少なくとも慢性疼痛や抑うつに関して他の情動制御方略と同様に有用である。

アブストラクトのみ

2012年4月11日水曜日

ネガティブ情動の意図的制御と偶発的制御の重複した神経基盤

Overlapping Neural Substrates Between Intentional and Incidental Down-Regulation of Negative Emotions. 2012 Emotion.

感情制御は様々な経路で行われるが、異なる操作における神経認知基盤の重複を検討した研究は少ない。本研究では、意図的制御を行う課題と偶発的制御を粉う課題の2つの独立した課題を10人の被験者の扁桃体と前頭前野の活動を測定するために課して、これらの課題の波形にある神経基盤の潜在的な重複を同定することを目的にfMRIを行った。解析は扁桃体と下前頭回を関心領域として行った。両課題において扁桃体の活動は感情制御に伴って低下した。意図的制御においては扁桃体の活動低下は情動評価の低下を伴っており、偶発的制御の際には扁桃体の活動減少は自己報告の攻撃性と相関していた。重要なことは、被験者間において意図的制御における扁桃体の活動減少の程度が、偶発的制御における減少の程度と相関していたことであり、各課題は異なる日に行われたので、各課題における扁桃体の活動の指標も独立して抽出されたことである。さらに、下前頭回と扁桃体の結合性は、課題間において重複していた。結果からは、2つの課題は前頭前野の重複した関与を導き、扁桃体の共通した活動減少を、方略にかかわらず生じることを示した。意図的情動制御と偶発的情動制御は現象的には異なるものであるにもかかわらず、共通した神経認知的経路を喚起させると考えられる。

10人しか被験者がいないのに論文になるとは驚きである。おそらくこの2つの研究に両方参加した被験者が少なかったからではないだろうか?情動刺激のラべリング際に偶発的感情制御を行っていると言い切るところがすごい。

2012年4月4日水曜日

恐怖と不安の認知における神経生物学的相関:認知ー神経生物学的情報処理モデル

Neurobiological correlates of cognitions in fear and anxiety: A cognitive-neurobiological information-processing model. 2012 Cognition & Emotion

我々は恐怖や不安と関連した認知の神経生物学的基盤をレビューした。認知過程は返答隊や海馬、島と言った皮質かネットワークにおける注意過敏を反映した異常な活動と関連しており、その後の前帯状回や前頭皮質において行われる回避反応方略の活動も関連している。このようなエビデンスに基づいて、我々は恐怖や不安の認知神経生物学的情報処理モデルを提示し、近くされた脅威に対する情報処理の特定の段階における個別の脳領域との関連を示唆した。

あまりつながりがなさそうなauthor達だと思っていたが。さすがに内容がまとまっている。大変参考になった。

2012年4月3日火曜日

曝露と再構成:効果的な心理療法とはなにか、どのようなものか

Exposure and reorganization: The what and how of effective psychotherapy 2011 Clinical Psychology Review

心理療法の有効性は一般的に認知されているが、研究者はその有効性と心理療法によって喚起される変化のメカニズムについて適切な説明の同意が得られていない。このような研究領域の発展を促進するために、研究者は治療技法よりも治療の原理に焦点を当てるように呼びかけている。このような観点から、曝露技法は有益である。不安障害に対する一般的に用いられ、成果が得られているにもかかわらず、近年になってやっと他の疾患の治療として検討され始めている。曝露の原則に眼を向けることで、曝露が心理療法の成功の診断共通的な要素であると考えることが可能である。曝露をPerceptual Control Theory(PCT)の観点から理解することで、概念的あるいは統計的というよりも変化の機能的メカニズムとして同定することができる。機能的には、曝露は心理的苦痛の改善に必要な内的再構成に不可欠な前駆事象であると理解できる。PCTは心理療法において曝露についての検討と広い適用を治療の最適化と有効性の改善のために必要であると示唆している。心理療法の拡大化に比べて、治療の有効な要素の理解は同様に発展しているとは言えない。心理的苦痛解決に異なる多数のメカニズムやプロセスがあり、異なる心理療法が異なる要素で成り立っているとは考えにくい。実際のところ、様々な心理療法の多数の所産が有効に働くかどうかは、治療の重要な要素が記述されることや変化のメカニズムが同定されることの前に、おそらく一番重要なサインである。曝露という平凡なテクニックは心理療法の有効性にとって鍵となりうるものだろうか?心理療法にとって、ローマに続く一つの道があるのか?それともその道を通る様々な方法があるのか?

分かりにくい言い回しがあって読むのに苦労した。心理療法がどのようなメカニズムを持つのかという点は重要なはずだが、現場ではあまり気にされていない。この乖離を埋める努力として自分の研究が存在意義を持てるようにしたい。

2012年3月27日火曜日

内的脅威の予期における脳活動

Brain activation during anticipation of interoceptive threat 2012 Neuroimage

本研究では、身体感覚に対する恐怖高群と低群において過呼吸によって喚起される身体症状の脅威の予期における神経ネットワークを検討した。15人の身体症状に対する恐怖高群と14人の低群は、高群においてより強く不快と評価される過呼吸課題の生起を予期させるキューを最初に学習した。不快な症状の予期の間、恐怖高群は身体症状の高まりと瞬目反応を示した。この学習セッションの後に、被験者はfMRIの中で学習セッションで示された過呼吸のキューと正常喚起のキューを確認したが、実際に過呼吸はMRIの中では行わなかった。過呼吸の予期において両群において島前部と眼窩前皮質と背側前帯状回の活動上昇が示された。群間の相違は2つ示された。最初に、高群の被験者は全体的にこれらの領域の強い賦活が見られ、文脈を通して高い不安が見られた。次に、低群の被験者は過呼吸のキューに対して強い反応が生じず持続しなかったが、高群においてはキューの終了後にも反応が持続していた。背側前帯状回の活動は身体症状に対する恐怖と相関していた。これらのデータは内的脅威の予期は外的脅威の予期と同じネットワークを賦活させることを示した。よってこのパラダイムはパニック障害の患者の不安や治療効果を研究するための革新的な方法である。

不快刺激をfMRI中に提示しなくてもしっかり学習させればCSのみで反応が出るようだ。

2012年3月19日月曜日

内感受性恐怖条件付けとパニック障害:CSとUSの予期の役割

Interoceptive fear conditioning and panic disorder: The role of conditioned stimulus-unconditioned stimulus predictability. 2012 Behavior Therapy 内感受性条件付けはパニック障害の行動理論適切名の中核である。だが、人間においてない感受性条件付けを評価しようとした研究は一つだけである(Acheson et al 2007)。その研究では空気中20%濃度のCO2吸入のにおいて短時間のものをCS、長時間の者をUSとしてCS単独、CS-US、CS−US独立の3条件における恐怖学習を検討した。結果からは恐怖条件付けはCS-USにおいてみられ、恐怖反応と消去抵抗はCS-US独立の条件においてみられた。著者らはこのような効果がCSとUSの弁別が困難であったためと推論した。本研究の目的は、(a)前回の研究を方法論的に改善して結果を再現することと、(b)恐怖学習におけるCS-USの弁別の困難さの活性と不活性を検討することであった。104名の健常者は無作為に4つの条件に割り振られた。(a)CSのみ(b)CS-US対提示(c)CS-US独立提示(d)CS-US独立提示においてCS弁別手がかりを提示する条件であった。電気生理と自己報告を条件反応の指標とした。予測と一致して対提示と独立提示双方においてCS単独での恐怖反応が見られた。さらに、CS弁別手がかりによって恐怖反応が減少した。全体的にはパニック障害の現代における学習理論と結果が一致しており、内感受性条件付けの役割とパニック障害の予測不可能性を明らかにした。 ようはパニック障害においては弱い身体感覚の上昇がCSとなってパニック発作や恐怖反応が生じるということだが、これが身体感覚曝露の根拠にもなっている。しかし、ほとんど内感受性条件付けの基礎研究自体はほとんどないというのは軽い驚きである。

2012年3月17日土曜日

精神疾患における認知障害;特徴、原因そして治療の改善のための探求

Cognitive disfunction in psychiatric disorders: characteristics, causes and the quest for improved therapy 2012 Nature Reviews Drug Discovery 精神疾患の研究は抑うつ、不安、幻覚と言った情動症状に対して伝統的に関心が向けられてきた。しかし、恒久的な認知障害の制御困難は社会と職業の統合を含む生活の質を危機にさらしている。その結果、認知機能と関連する細胞や脳の回路を特徴づける精神疾患の性質と認知障害の原因を定義し、より効果的な治療法を定義するために集中的な努力が行われている。成果を上げるためには、動物モデルのように厳格な検証と同様に現実世界での患者の認知機能を測定することに依存している。本稿では、この問題を批判的に議論し、精神疾患によって苦しむ患者の認知を改善するためのチャレンジと機会を強調したい。 精神疾患の認知機能に関する網羅的な評論である。非常に勉強になる。

2012年3月9日金曜日

twitter開始

日常に変化を求めてtwitterのアカウントを作ってみる。心理的引きこもりの自分には合わないメディアではあるが、退屈しのぎに始めようと思った。使い勝手が全く分からないまま始めてしまったが、そのうち使い方をきちんと調べてみよう。一日のうち2〜3個はつぶやけることを目標にする。数少ない訪問者の方は良ければフォローをお願いします。twitter.com/#!/freeroll_

2012年3月6日火曜日

腹内側前頭前野−皮質下システムと情動の意味の生成

Ventromedial prefrontal-subcortical systems and the generation of affective meaning. 2012 Trends in Cognitive Sciences vmPFCは情動感覚や社会的手がかり、長期記憶、自己意識等の情報を統合する領域群の相互関係を構成している。vmPFCは見かけ上本質的に異なる過程に関わっているように見えるが、これらの過程は共通のテーマに集約することが出来る。vmPFCは情動反応そのものに必須ではないが、情動反応が特定の結果についての概念的情報によって形成される時に重要である。vmPFCは生体の情動行動を調整する脳幹とリンクするハブとして機能し、情動の意味の生成と記述される、多様な実験パラダイムにおけるvmPFCの共通した役割を説明することが出来る。 abstractの英語を訳すのが困難だった。vmPFCが情動反応そのものではなく、情動を評価しセルフモニタリングするために機能するという点には同意できる。しかし、結局vmPFCが情報の概念付けに具体的にどのような役割を果たすかはよくわからない説明だった。英語力が無いからかもしれないが。

2012年2月23日木曜日

MRI中のセッション内、セッション間の主観的ストレスと神経内分泌ストレスパラメータの変化:スキャナートレーニングのコントロール研究

Within and between session changes in subjective and neuroendocrine stress parameters during magnetic resonance imaging: A controlled scanner training study 2012 Psychoneuroendocrinology

MRIスキャナーがストレッサーとして機能し、主観的、内分泌的ストレス反応を喚起するというエビデンスが蓄積している。被験者をスキャナーになじませるアプローチは予定していた神経活動に対する意図しない影響を最小化出来る。しかし、スキャナートレーニングの効果に関するコントロールされた研究はない。比較研究デザインを用いて、2日間にわたるMRI内、モック、研究室環境におけるトレーニングに参加した3群の63人の健常者のセッション内、セッション間の主観的ストレスと神経内分泌ストレスを解析した。馴化課題はセッション内の主観的ストレスと内分泌ストレスの変化を評価するために行った。セッション間の変化は2日間の変化によって示された。研究室環境では見られなかったが、MRIとモックによるトレーニングはスキャナーに対する主観的苦痛を低減させた。対照的にコルチゾールの反応は2日目には全般的に増加しており、コルチゾールの反応が見られた被験者はMRIとモック内で特に増加していた。主観的覚醒と主観的不安のセッション内の馴化は条件に関わらず観察された。本研究の結果はスキャナー環境でのトレーニングは主観的苦痛の低減に成功するが、スキャンの繰り返しによって内分泌ストレスレベルの感作を引き起こすことを示唆した。主観的苦痛はMRIの前に被験者を馴れさせることで調整できる。この結果が追認されるのであれば、被験者を繰り返しMRI測定するデザインを計画する研究者にとって考慮すべき結果を示している。

2012年2月8日水曜日

うつ病は快画像の報酬よりも金銭的報酬による報酬系の活動によって特徴づけられる

Major depressive disorders is characterized by greater reward network activation to monetary than pleasant image rewards. 2012 Psychiatry Research: Neuroimaging

報酬に対する意欲や快感情の喪失であるアンヘドニアは大うつ病性障害の特質である。多くの研究は報酬の予期と提示時に前頭前野ー線条体の機能障害を同定している。しかし、今日まで金銭と快画像のような形式の異なる報酬の違いをうつ病において検証した研究は無い。そこで我々は金銭的報酬と快画像に対するうつ病患者の神経反応を検討するため、修正MID課題を用いて金銭報酬と快画像報酬の予期と提示時における脳活動をfMRIで測定した。被験者は9人のうつ病患者と13人の健常者であった。うつ病患者は金銭的報酬の予期において眼窩前頭前野と梁下野の活動減少が見られ、快画像の予期においては帯状回と補足運動野の活動減少が見られた。うつ病患者は金銭的報酬と快画像の予期野比較において健常者よりも尾状核の活動増加が見られた。結果からは報酬の予期におけるうつ病患者の報酬系の活動の減少と快画像に対する活動減少が示唆された。

前から思っていたが、うつ病の報酬系の機能低下を金銭的報酬で行うことが果たして病態と一致しているだろうか?健常者における報酬系の神経活動の測定には適していると思うが、モダリティと被験者の特性によって何が報酬や罰になるかは様々な組み合わせがあるように思う。

2012年1月31日火曜日

強迫性障害におけるfMRIパターン認識

fMRI pattern recognition in obsessive-compulsive disorder 2012 Neuroimage

強迫性障害は症状と関連した非特異的情動刺激に対する神経活動の調節障害に特徴がある。本研究では、恐怖刺激、不快刺激、中性刺激の認識においてOCDと健常者の脳活動のパターンを解読できるか検討した。さらに、脳活動のパターンの違いがOCD
と健常者を分類できるかを検討した。2種類の分類解析を行った。解析1ではそれぞれの刺激における脳活動のパターンから被験者が視認した刺激を分別した。解析2ではサーチライト解析によって局所脳活動パターンから診断的分類を行った。解析1では両群において恐怖刺激と中性刺激を分類することとが有意な精度で可能になり、不快刺激と中性刺激の分類は健常者の方が有意に精度が高かった。解析2ではOCD患者のOFCと尾状核において診断情報を得ることが出来た。これらの領域における分類精度は100%であった。結果をまとめると多変量パターン分類解析を用いることでOCDにおける信頼できるバイオマーカーを見いだすことが出来た。

全脳でパターン解析を行うよりも、症状喚起課題に関連した脳領域においてパターン解析をした方が分類精度は高まるようだ。

2012年1月30日月曜日

日本における統合失調症患者に対するNEARのパイロット研究

The pilot study of a Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation for patients with schizophrenia in Japan 2011 Journal of Psychiatric Research本研究の主目的は日本におけるNEARの実現性と認知機能に対する効果を示すことである。この多施設研究では疑似実験デザインを用いた。NEARプログラムは週2時間のコンピューターセッションと週一回の60分程度のグループセッションで更正されている。被験者はNEARを6ヶ月行った。さらに練習効果を考慮して、我々は21人の患者を6ヶ月の間隔をあけて2回アセスメントした。我々は認知機能を日本語版BACS-Jを用いて行った。結果的に、NEARグループは運動速度をのぞいて全般的な認知機能の改善が見られた。本研究の結果は欧米と同様に日本においてもNEARの有効性を示した。

今や懐かしいがNEARの日本における臨床研究が論文になっていた。認知機能だけでなく就労や復職、生活場面などがどのように変化したのかをより明らかにしていくことが望ましい。

2012年1月28日土曜日

不安と抑うつに対する短縮版Transdiagnostic インターネット認知行動療法のオープントライアル

An open trial of a breif transdiagnostic internet treatment for anxiety and depression. 2011 Behavior Research and Therapy
本研究は短縮版TransdiagnosticインターネットCBTの効果を検証した。この短縮版ではオリジナルの物と同じCBTの中核スキルを含んでいるが、8から5セッションに短縮し、治療期間を10週から8週に減らした。32人の被験者が参加し、大きく分けて大うつ病性障害、全般性不安障害、パニック障害、社交性不安障害出会った。被験者はオンラインの教育セッション、ホームワーク、毎週の臨床心理士とメールによるコンタクトを受けた。81%の被験者がプログラムを完遂した。治療直後と3ヶ月後のフォローアップデータはそれぞれ28人と32人から受け取ることができた。被験者はDepression and Anxiety scale、PHQ-9、GADにおいて有意な改善が見られ、それぞれのフォローアップにおける効果量は1.05,0.73,0.95であった。被験者はこの手続きに対して高い需要性をオリジナルバージョンと同等に示した。一方で、臨床家が被験者に費やす時間は短縮版で平均44分に対してオリジナル版は84分であった。これらの結果はTransdiagnosticインターネットCBTの効果を支持する物であり、短縮版が有効であることを示唆した。

不安とうつなら何でもありのTransdiagnosticCBTだが、集団療法で実施可能だろうか?集団で実施可能なら現場でも実施でき、実験やfMRIを行うこともできそうだ。まだその段階には至っていないのか、インターネット形式で発展させるつもりだろうか?

2012年1月25日水曜日

不安感情の生成と調節を支える一時的、持続的神経信号の相互作用

Interaction Between Transient and Sustained Neural Signals Support the Generation and Regulation of Anxious Emotion. 2011 Cerebral Cortex

不安感状は一時的な恐怖反応と持続的な不安があり、先行研究ではこれらのシグナルは異なる神経回路によって支えられていることを示唆している。本研究ではブロックーイベント混合モデルの情動喚起パラダイムを用いて55人の健常者に同時に一時的、持続的不安を測定することで、これらの潜在的に異なるシステムの相互作用を検討した。結果からは、情動処理に関わるネットワークの構成要素は、一時的不安と持続的不安にそれぞれ特異的な反応を示した。扁桃体と中脳は一時的不安にのみ反応し、腹側前脳部と島前部は課題によって喚起された不安にポジティブに跡をつける情動的文脈の中で持続的な活動を示した。少ない不安の状態は、腹内側前頭前野の持続的活動と関連していた。さらに、腹内側前頭前野は不確実性に対する不耐性のスコアが高いほど活動が低下しており、この領域の不活性は脅威刺激に対する扁桃体の一時的活動の増加と関連していた。本研究は時間的スケールを通して一時的不安と持続的不安の相互作用の脳回路がどのように関わるかを示し、一時的不安症状と持続的不安症状によって特徴づけられる臨床症状の調節障害の異なるメカニズムについて示した。

この論文の課題が今行っている実験課題と少し似ていた。一時的不安と持続的不安をどのようにデザインするのか論文だけでは理解できなかったが、自分でも出来るようになりたいと思った。

2012年1月23日月曜日

累積した苦痛と内側前頭前野、前帯状回、島の灰白質体積の減少

Cumulative Adversity and Smaller Gray Matter Volume in Medial Prefrontal, Anterior Cingulate, and Insula Regions 2012 Biological Psychiatry

苦痛とストレスの累積は精神疾患のリスクと関連する。基礎研究では前頭皮質と辺縁系に対する累積ストレスの影響は示されているが、ヒトを対照にした脳形態に関する研究は少ない。そこで、我々は苦痛の累積が情動の制御や自己制御、トップダウンプロセスに関わる脳領域の灰白質体積にどのような関連を持つか検討した。103人の18−48歳の被験者を対照に、苦痛の累積についての面接評価と構造MRIを行った。全脳のVBM解析を年齢、性別を調整して行った。苦痛の累積は内側前頭前野、島、前帯状回の体積減少と相関した。最近のストレスイベントは内側前頭前野と島の体積減少と関連していた。トラウマの経験は内側前頭前野、前帯状回の体積減少と関連していた。主観的な慢性ストレスとライフイベントの相互作用は眼窩前皮質と島、前帯状回の体積減少と関連していた。本研究の結果は苦痛となるライフイベントへの曝露経験の累積はストレス情動制御、衝動コントロールに関わる前頭皮質や辺縁系の体積減少と関連してた。これらの結果はうつ病や依存、その他のストレス関連性疾患への脆弱性を媒介する者と考えられる。

ストレスが直接脳体積の減少に関わるようだが、これを縦断的に調査すれば精神疾患への影響も調べられるだろう。

2012年1月16日月曜日

情動制御の発達:児童、思春期、青年における認知的再評価のfMRI研究

The development of emotion regulation: an fMRI study of cognitive reappraisal in children, adolescents and young adults 2012 Social Cognitive and Affective Neuroscience

情動制御のために認知的再評価を用いる能力は成人において適応的なスキルであるが、その発達については知られていない。認知的再評価は線形的な前頭葉の発達によってサポートされていると考えられているので、認知的再評価の発達も線形的であると予測される。しかし、社会感情的発達の研究からは思春期に特異的な非線形的発達が示唆されている。我々は10−13歳の児童、14−17の思春期、18−22の青年を対照にネガティブな情動を制御する認知的再評価の課題を行った。行動的には情動の反応の自己評価に年齢の効果は見いだせなかったが、線形関係と二次関数関係が認知的再評価の能力と年齢に有ることを見いだした。神経活動からは、我々は腹側前頭前野における活動の増加が年齢と線形的関係に有ることを見いだした。精神状態のような社会認知に関わる内側前頭前野、後部帯仗回、前部側頭皮質の活動が年齢と二次関数的関係にあることを見いだした。これらの領域は思春期において情動反応に対する活動の低下が見られたが、認知的再評価のときには著しく高まっていた。これらのことは、1:年齢と線形的に認知的再評価に関わる納活動が増加すること、2:思春期においては精神状態の帰属に関する領域が常態ではなく、3:認知的再評価のときには逆転することを示唆している。

思春期は嵐であるということか。認知的再評価の成熟については考えたことがなかったので面白い視点だと思った。願わくば成人のデータとの比較と思春期において社会認知に関わる領域に対して影響を与える要因や別の脳領域が何なのかを知りたいところである。

2012年1月6日金曜日

うつ病と不安障害における情動語の符号化と再認に関するfMRI研究

Functional magnetic resonance imaging correlates of emotional word encoding and recognition in depression and anxiety disorders 2011 Biological Psychiatry

うつ病、パニック障害、社交不安障害は成人において頻発する精神疾患であり、情動情報の処理に共通した異常があるという点で特徴的である。我々は情動語の符号と再認課題遂行中にうつ病患者51名、うつ病と不安障害の合併59名、不安障害のみの56名、健常者49名にFMRIを行った。さらに、症状の重症度と脳体積、抗うつ薬との関連も検討した。患者群は共通して右海馬の活動減少がポジティブ語の符号化中にみられた。ネガティブ語の符号時には島の活動増加がうつ病を有する群にみられ、扁桃体と前帯状回の活動増加がポジティブ語の符号においてうつ病患者のみにみられた。再認においては不安障害の患者は下前頭前野の活動増加がみられた。全体的には、薬物療法や脳体積はこれらの結果に影響しなかった。ポジティブ語の符号における海馬の障害はうつ病と不安障害に特有の共通した脆弱因子と考えられる。ネガティブ語の符号における島と扁桃体はうつ病におけるネガティブ情動に対する感受性の増加と解放の困難さが基盤に有るとおもられる。我々の結果はうつ病と不安障害の共通した神経生物学的障害を強調するものであり、ポジティブな情報に対する全体的な感受性の低下として特徴づけられる。

Biological Parametric Mappingを用いて解析していた。サンプリングなどの方法も含めて結果とともに優れた研究だと思う。
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