2011年11月22日火曜日

うつ病の神経生理学的マーカーの統合

Integrating neurobiological markers of depression 2011 Archives of General Psychiatry

今日においては精神医学的診断は行動的症状と経過に基づいて行われているが、近年は精神疾患の神経生理学的マーカーに対する興味はそれに変わるものとして生じてきている。しかし、現在の分類の方法は主に単一の生物学的マーカーのデータに基づいており、それにより症状の複雑なパターンを特徴化することが困難になっている。本研究の目的は、複数の症状と関連した神経活動と関連した脳画像データを統合し、脳活動の推定モデルに由来するうつ病の文脈における実用性を示すことである。2群の被験者がうつ病と関連した3つの課題遂行中のfMRI測定に参加した。被験者はうつ病と診断された患者と、性別や年齢、喫煙、利き手等を一致させた健常者30人ずつを群に分けた。3つの課題の神経活動のパターンに基づいて患者の分類の精度を検証した。情動や気分と関連したデータの統合は、単一のデータを用いるよりも分類の精度を高めた。予測モデルからは中性顔と大報酬と安全手がかりの神経活動の組み合わせはうつ病の予測因子として余剰なものではなかった。全体の分類と関連した脳領域は、情動処理と刺激特徴の分析と関連した複雑なパターンを構成した。我々の脳画像データの統合の方法は、複数の症状と関連した神経活動と関連し高い精度の分類アルゴリズムを提供した。バイオマーカーの統合データは情動と報酬の処理と関連したデータがうつ病の高い精度の分類に不可欠であることを示した。将来は、より大規模な研究において、バイオマーカーに基づく診断アルゴリズムの臨床応用の可能性を検討すべきである。

先にやられた。現実は厳しいもののこれの上を行くデザインでやるしかない。

2011年11月21日月曜日

治療遺伝子:5HTTLPRと心理療法に対する反応

Therapygenetics: the 5HTTLPR and response to psychological therapy 2011 Molecular Psychiatry

要約がないので翻訳はしないことにする。セロトニントランスポーター遺伝子多形のssは不安障害の子供に対するCBTの効果が6ヶ月後のフォローアップ時に低下するという論文。Trends in Cognitive ScienceのSpecial Issueでも紹介されていたが、心理療法の個別化であったり、より特異的な認知機能やそれに特化した心理療法の発展に期待が持てる話題である。日本ではまず興味を持たれない話題だが。

2011年11月15日火曜日

曝露中の感情の変化と持続

Emotional variability and sustained arousal during exposure 2011 Journal of Behavior Therapy and Experimental Psychiatry

恐怖症や不安に体する伝統的な曝露療法は恐怖反応の減少を学習の指標として用いていた。しかし、近年の動物モデルでは曝露の際の恐怖反応の持続と上昇は長期的に良好な予後を予測しうると示唆されている。曝露中の覚醒の持続を59人のスピーチ恐怖のアナログサンプルを対照に検討した。被験者は、曝露の際にさらに恐怖刺激を加えられる場合と加えられない場合の曝露療法に振り分けられた。群を分けることによって曝露の1週間後の結果は予測されなかった。どのような変数が予後を予測するかについての回帰分析からは、曝露中の覚醒の持続と主観的恐怖反応は、人口統計学的指標と曝露前の恐怖の程度を調整することで、フォローアップにおける恐怖の低下を予測した。追加された恐怖刺激は予測された効果を生じさせることに失敗した。しかし、何人かの被験者は曝露中の覚醒が持続され、それが良好な予後と関連することが示された。曝露中の覚醒の持続と恐怖反応の変化は、曝露における恐怖の順化よりもより良い予測因子であることが示唆された。

スピーチ恐怖ではなく、単純に疼痛等による恐怖条件付けの消去のための曝露ではどうか?社会的な刺激は複雑な処理を経るので、追加された恐怖刺激にたいする反応はスピーチ恐怖の被験者と行っても個人差がありそうである。伝統的なemotional processing thepryに従えば、この研究のように曝露中の恐怖や覚醒の程度は曝露の効果と関連するだろう。しかし、もう少し単純な恐怖条件付けで再検討する方が良いように思う。

2011年11月2日水曜日

全般性不安障害と大うつ病性障害の感情処理の潜在的制御における共通した異常と疾患特異的な補償作用

Common abnormalities and disorder-specific compensation during implicit regulation of emotional processing in generalized anxiety and major depressive disorders. 2011 American Journal of Psychiatry

不安障害と大うつ病性障害は、両方とも感情の処理と制御における異常が関連している。しかし、神経科学のレベルではこれらの共通点と相違点はほとんど明らかになっていない。本研究では、観察可能な行動指標と不安障害とうつ病に関連した辺縁系ー前頭領域の活動を伴う刺激を用いた感情不一致課題を用いた検討を行った。32人の対照健常者と18人の全般性不安障害の患者、14人の大うつ病性障害の患者、25人の全般性不安障害と大うつ病性障害の併存する患者が、顔表情の分類を単語のラベリングを無視して行う感情不一致課題を行い、fMRIの測定を行った。ここでは、不一致の制御に関する試行間の変化を行動指標と神経活動で比較検討した。行動指標からは、全般性不安障害を有する患者に感情の不一致の潜在的制御の失敗がみられた。対照的に、VACCと扁桃体の活動と結合性の異常が全患者群で示された。しかし、大うつ病性障害のみの患者ではこの活動の低下が、外側前頭前野の活動によって補償され、これらの活動は行動指標で示される潜在的制御の成功と相関していた。これらの結果はVACCと扁桃体における不安障害と大うつ病性障害の共通した異常を示しており、遺伝疫学的に共通していることと関連していると思われる。うつ病における認知的制御の補償的作用は、潜在的レベルでも生じうる障害と補償作用の相互作用による精神病理学的に複雑な性質を示唆していると考えられる。

認知課題においてうつ病で前頭前野の活動上昇が補償作用として生じることが有りうるという点は、解釈としては脳をフルに使わないと課題ができないということか。今後引用されることが多い論文になるかもしれない。
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