2010年12月13日月曜日

うつ病における認知的再評価の、急性および持続性の効果

Acute and Sustained Effects of Cognitive Emotion Regulation in Major Depression
Susanne Erk,1 Alexandra Mikschl,2 Sabine Stier,2 Angela Ciaramidaro,3 Volker Gapp,2 Bernhard Weber,2 and Henrik Walter1,4
The Journal of Neuroscience, November 24, 2010, 30(47):15726-15734
うつ病患者と健常者に対して、視覚的感情刺激に対する認知的再評価を行う課題を実施した。15分後に視覚的感情刺激を受動的に観察するだけの課題を実施した。認知的再評価を行っているときには、患者もネガティブ感情を扁桃体の活動と伴に低下させた。一方で、低下の程度は重症度と関連していた。さらに、観察課題では健常者では持続的に扁桃体の活動の低下を維持できていたが、うつ病患者では維持できなかった。Connectivity解析ではうつ病患者では前頭葉と扁桃体の連結が低下しており、認知的再評価の際の前頭葉の活動低下が観察課題における扁桃体の活動低下の維持と関連していた。

2010年8月9日月曜日

感情制御と不安障害:統合的批評

EmotionRegulationandtheAnxietyDisorders:AnIntegrativeReview
JoshM.Cisler & BunmiO.Olatunji &MatthewT.Feldner & JohnP.Forsyth
JPsychopatholBehavAssess(2010)32:68–82

この10年ほど、感情制御の構造に関する検討は増加しており、それから不安障害の理論についても重要な示唆が得られている。本論文は、以下の3つの研究を批評した。
1.概念的、行動的神経科学的レベルで感情制御について個別に扱った研究
2.感情制御の方略によっては恐怖を増強したり減衰したりすること
3.感情制御が単なる感情の活性化では説明できる以上の不安障害の分散を説明すること。我々は、不安障害の病態において感情制御の機能を説明するモデルを提起する。

コメント
久しぶりの更新。やろうと思ってもできない状態が続いていたが、やっとできた。
内容はともかく継続できるようにしよう。
この論文の内容自体に目新しいものは無いものの、不安障害の病態モデルに感情制御の障害を入れてくれたことで、こちらの研究はやりやすくなる。

2010年6月29日火曜日

脳機能画像研究における疑陽性の統制方法について

Craig M. Bennett1, George L. Wolford2 and Michael B. Miller 2009 The principled control of false positives in neuroimaging Soc Cogn Affect Neurosci 4 (4): 417-422.

脳機能画像研究は大量の変数を扱うため、統計結果の疑陽性は大きな議論の的になる。FDRやFWEのような疑陽性の確率を推定する補正を行うと、補正なしの結果で出た領域が一つも残らないことがある。もし、あるJournalに乗った論文が補正なしの結果で、自分のデータが補正して何も残らなかった場合、Journalに乗っている論文が世間に受け入れられることになり、その後の結果の再現性が困難になる。そのようなことを勘案すれば、補正を行った研究で示された結果を基本的には参考にすべきであろう。
高インパクトファクターのJounralに乗っている脳機能画像研究のうち、補正なしのデータは約30%だが、脳機能画像研究全体では約60%が補正なしの論文である。
しかし、FWEなどの補正を行うことについては、得られる結果がConservativeになりすぎるという声もある。われわれは、補正なしの結果を載せる場合には、補正を行った場合の結果も併記することにより、読者が疑陽性の可能性を含めて公平に論文を読むことができると主張したい。

2010年5月28日金曜日

セロトニン受容体遺伝子多型は気分制御中の扁桃体の活動を調整する

Seth J. Gillihan, Hengyi Rao, Jiongjiong Wang, John A. Detre, Jessica Breland, Geena Mary V. Sankoorikal, Edward S. Brodkin and Martha J. Farah 2010 Serotonin transporter genotype modulates amygdala activity during mood regulation. Social Cognitive Affective Neurosciences, 5(1):1-10.
近年の研究はうつ病の脆弱性においてセロトニン受容体(5-HTTLPR)のShort alleleが関連していることを示唆しており、特にストレスの文脈において顕著である。いくつかの脳機能画像研究は5-HTTLPRの遺伝子多型はネガティブ刺激に対する扁桃体の再活性を予測し、Short alleはうつ病のリスクを示している。本研究は5-HTTLPRの遺伝子多型がSad mood誘導時と誘導後の回復において同様に神経活動に影響を与えるかどうか検討した。被験者は15人のShort Homozygous(S)と15人のLong Homozygous(L)であった。脳血流はPerfusion fMRIで測定した。ベースライン、Sad mood、Sad moodの回復、その後のベースラインの4ブロックを設定した。ベースラインと比較して、Sad moodの回復のときには扁桃体の活動はS群で大きかった。Sad mood誘導時には差が無かった。これらの結果はS alleleの気分の制御における扁桃体に対する影響と気分の回復における扁桃体の過活動がうつ病のリスクを高めるS alleleのメカニズムの一つであることを示唆している。

2010年5月27日木曜日

恐怖の消去、逆転学習、制御を媒介する重複した神経システム

Schiller Delgado 2010 Overlapping neural systems mediating extinction, reversal and regulation of fear Trends in cognitive sciences
学習された恐怖は、環境と恐怖が予期される状況との間の手がかりの連合を即座に発見する過程である。しかし、環境の変化に伴う適応機能は、この学習を即座に更新することを生体に求め、もはや恐怖が予想されないときには恐怖反応を抑制することができる。我々は、恐怖条件付けを抑制する消去、逆転学習、制御といった3つの方略に焦点を当て、その神経システムをレビューした。これらの方略を適用した3つの個別の研究を直接的に比較し、人の脳に重複した構造があることを見いだした。この回路は、課題にかかわらず柔軟に恐怖をコントロールすることができると考えられる。
重複した領域とは線条体と腹内側前頭前野である。これらの領域は課題にかかわらず活動が変化する。線条体は報酬と罰に関わらず学習の過程そのものに関与すると考えられる。内側前頭前野は扁桃体に対して抑制を掛けるため、課題にかかわらず活動すると考えられる。
SVM等でパターン分析を重複した神経システムにやると良いのではないか?

2010年5月19日水曜日

気逸らしと認知的再評価の神経基盤

Kateri McRae, Brent Hughes, Sita Chopra, John D. E. Gabrieli,James J. Gross, and Kevin N. Ochsner 2010 The Neural Bases of Distraction and Reappraisal Journal of Cognitive Neuroscience 22:2, pp. 248–262

気ぞらしと認知的再評価は2つの共通した認知的感情制御の方略である。脳機能画像研究は、これらがそれぞれ認知的制御に関与する前頭前野と感情反応を媒介すると考えられている辺縁系の交互作用によるものであることを示唆している。しかし、これまで直接的に気ぞらしと認知的再評価を比較した研究はなく、これらら異なる神経メカニズムや感情の結果をもたらすかは不明瞭である。本研究は気ぞらしと認知的再評価を検討し、共通点と相違点を見出した。双方ともネガティブ感情や扁桃体の活動の減少と前頭前野と帯状回の活動上昇がみられた。気ぞらしと比較して、認知的再評価はネガティブ感情を減少させ、感情と関連した脳領域の活動増加がみられた。認知的再評価と比較して、気ぞらしは扁桃体の活動減少と前頭前野と頭頂領域の活動上昇がみられた。これらの結果は気ぞらしと認知的再評価は注意や認知に関与する神経システムが異なっており、その結果感情の結果も異なることを示唆する

2010年5月17日月曜日

今年のプレミアリーグの感想

今期はチェルシーが優勝した。どのポジションにも安定感があり、実力のある選手がいたと思う。上位のチーム以外との対戦では、まるで大人と子どもが戦っているような空しさすら感じさせる強さだった。得点王を取ったドログバは圧倒的なフィジカルと決定力があり、彼に太刀打ちできるDFはいないような凄みがあった。ただ、自分はチェルシーのサッカーのスタイルはあまり好きではない。圧倒的な力があるだけに、簡単に相手を崩すことができてしまい、あっけなさを感じさせるからだ。それはマンチェスターユナイテッドにも共通している。今期はルーニーが本来持ち合わせていた得点力を遺憾なく発揮していたが、彼らの力も頭抜けていてサッカーの工夫という点では興味を惹かれなかった。そういう点では、やはりアーセナルのように、若くてまだまだ優勝するには力が充分ではないチームは相手を崩すために様々な工夫があり、スタイルがある。アーセナル以外ではトットナムも良かったと思う。徹底したサイドアタックと早い攻撃、激しい守備には熱くなった。自分は完成したチームよりもチームが強くなっていく過程に惹かれるのだろうと思う。来期はアーセナルにはシャマフが入るという話もあるが、ファンペルシーしかプレミアで通用するCFがいないので、しっかりとしたCFが獲得できればさらに強くなれるのではないだろうか。一方で、フェルマーレンが加入したものの、相変わらずDFはいまいちだったが。来期はさらに期待高めて観戦したい。

2010年5月2日日曜日

統合失調症に対する認知矯正療法のメタ解析

McGurk et al 2007 A meta analysis of Cognitive Remediation in schizophrenia. America Jouranal of Psychiatry 164:12,1791-1802.
目的
本研究では認知矯正療法が統合失調症における認知機能、症状、心理社会的機能に及ぼす効果について評価した。
方法
メタ解析に26本の認知矯正療法のRCT、1151人の患者を含めた。
結果
認知矯正療法は認知機能に対して中程度の効果サイズ、心理社会的機能に小程度の効果サイズ、症状に対して小程度の効果サイズを示した。認知矯正療法の効果は精神科リハビリテーションを加えた場合に心理社会的機能に対してより効果的であることが示された。
結論
認知矯正療法は認知機能に対して有効であり、機能的側面もまた改善が見込めるだろう。

2010年4月23日金曜日

統合失調症に対する心理的介入

キングトンやエマ・ウィリアムスの統合失調症の本を立て続けに読んだ。RCTのメタ解析からは結局のところ、研究のセレクションの仕方によって効果があるとも効果が無いとも両方の結果が出るようである。根本的な問題は、統合失調症の病態メカニズムが心理的にも生物学的にも解明されていないために、包括的な治療方法が開発されていないためではないだろうか。統合失調症が認知機能障害によって幻覚や妄想が生じるというがそれらは陽性症状のみであり、より深刻な問題は陰性症状だと思う。陰性症状は活動レベルや思考機能を大きく障害する。陰性症状への心理的介入方法はまだ十分に検討されていないようだが、この問題が解決することと機能障害を補償するスキルの獲得により社会復帰支援も進むのではないかと期待している。
当面実行可能なことはストレスマネージメントと心理教育だろう。どちらも日常生活上で必要であり、役立つと思う。
また、認知機能リハビリテーションはデザインに優れた効果研究が少ないため、効果について大きな期待はできない。恐らく、元々知的レベルが標準以上の患者にまず適応した方が良いのではないか。
いずれにしろ、リハビリテーションが可能かどうかすらアセスメントすることに問題が山積である。
できればなるべく焦点を絞り、拡散して目的や方法が漠然としないようにしたい。

2010年4月15日木曜日

精神病性障害における再発、症状、知識、治療遵守、機能に対する心理教育の有効性:メタ解析

Lincoln et al 2007 Effectiveness of psychoeducation for relapse, symptoms, knouledge, sdherence and functioning in psychotic disorders: A meta-analysis Shizophrenia Research 96, 232-245.
統合失調症に対する心理教育は広く適用されているものの、その効果の検証は不十分である。統合失調症の心理教育的介入は患者の家族を含めたっばいに有効であることがメタ解析によって示されている。だが、患者のみを対象とした心理教育の有効性は分かっていない。このメタ解析は短期及び長期の心理教育プログラムについて家族を含めた場合と含めない場合の効果を検証した。
RCTによる効果研究を解析に含めた。方法論、被験者、介入、妥当性によってコーディングを行った。効果サイズは固定効果モデルを用いて均質効果を算出し、ランダム効果モデルを用いて不均質効果を求めた。
 治療のモダリティと独立して、心理教育は再発に対して中程度の有効性を持ち、知識に関してはわずかな効果サイズが見られた。心理教育は症状、機能、治療遵守には有効でなかった。再発と再入院に関しては治療後12ヶ月は有効であったが、それ以上の期間では有効性を示せなかった。家族を含めた心理教育は治療直後及び7-12ヶ月後のフォローアップ時に症状改善に有効だった。患者のみを対象に下心理教育の有効性は示せなかった。

2010年4月4日日曜日

デイケアでの役割

・デイケアの各グループにおけるミーティング
 ・議論の方向性を整理し、方向付ける
 ・心理教育が可能なテーマには積極的に介入する
・認知リハビリテーション
 ・素材を整理して使用可能な素材のリストを作る
 ・プログラムの概要について聞く

2010年4月2日金曜日

病院での方針

・デイケアに参加
・なるべくCBTが役立ちそうなところへ
・デイケアの内容について、スタッフがどのような動きをしているか記録する
・就労支援と復職支援に積極的に参加できるようにする
・心理検査
・復職支援にて必要
・大きな目的
・認知機能リハビリテーションの計画作成をサポート
・病院の大きな方針である、患者を入院から外来、社会復帰へと繋ぐに当たってデイケアで何を担当し、何を行い、何を変えるかを明確にすること

2010年3月31日水曜日

今後の計画

今日が大学院最後の日である。とはいえ、これからもやっていくことに大きな変化があるわけでもない。今後の方針としては、感情制御の基礎研究を細々と行っていく。来年度は感情制御の基礎検討として生理指標を用いた実験とパニック障害の病態検討のためのfMRI研究を行う計画である。このうち一つでも何か論文にできれば尚良いが。いずれにしろ、丸4年かかったが無事修了できて良かった。あっという間というわけでもなく、振り返れば様々なことがあったが何とか乗り切ったという感じだ。年月は経って行くが、環境の変化に対応しながら自分のできることをやり続けられるようにしたい。

2010年3月26日金曜日

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediationについて

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation(NEAR)を今勤めている病院で計画している。日本語の本を買って読んでみたが、基本的にリハビリテーションの内容は患者に合わせて雑多なものを使用するというスタンスのようなので、同じNEARといってもやっていることは場合によって異なると思われる。認知行動療法的に考えれば、認知機能について機能分析をした上で、問題点に対してそれぞれ有効な技法を組み合わせて実行すると言ったところだろう。しかし、問題はリハビリテーションの具体的な内容がコンピュータープログラムで行われていると言う点である。児童や学生の教育用のプログラムは日本でもあるが、それらが認知機能にどのように有効かは分からないので、患者の認知機能の障害が評価できてもそれにあったプログラムを使えるだろうか?できれば既にNEARを施行している施設に質問したいと思う。

2010年3月22日月曜日

感情に焦点を当てる:マインドフルネスは悲しみの神経表出を変える

Farb NA, Anderson AK, Mayberg H, Bean J, McKeon D, Segal ZV. 2010 Minding one's emotions: mindfulness training alters the neural expression of sadness. Emotion. 2010 Feb;10(1):25-33.

ネガティブな感情を和らげ、耐性を増すことはメンタルヘルスの特徴である。マインドフルネストレーニング(MT)はそのような結果をも足らずものの、作用機序は殆ど知られていない。本研究では、fMRIを用いて8週間のMTを受けた群と待機群の悲しみ気分の誘導と関連した神経活動を比較した。悲しみ気分は自己関連づけと関連した脳領域広範の活動をもたらした。主観的評価が等しかったにもかかわらず、MT群は耐性感覚野の活動が増加した。これらの領域の活動は、抑うつ症状の減少と関連していた。

マインドフルネスはあまりよく知らないが、その理由は作用機序が不明瞭で了解できない部分が多いからだろう。このような神経活動から作用機序を検討する試みが進んでいけば、作用機序が明確になって理解ができるようになるかもしれない。

2010年3月19日金曜日

社会不安障害における自己に対するネガティブな信念への認知的再評価の神経メカニズム

Goldin PR, Manber-Ball T, Werner K, Heimberg R, Gross JJ. 2009 Neural mechanisms of cognitive reappraisal of negative self-beliefs in social anxiety disorder. Biological Psychiatry 66, 1091-1099

社会不安障害は自己に対するネガティブな信念を持つ。このネガティブな信念は感情処理を促進し、感情の制御を妨害する。認知的再評価は自己に対するネガティブな信念を変化させ、感情の活性化を制御する目的で用いられる。しかし、この認知的再評価と社会不安障害の神経基盤との関連は明らかになっていない。27人のSAD患者と27人の健常者を対象とした。被験者は個々人にとってネガティブな社会的場面を想起させる単語を観察した。その際に、認知的再評価を行う条件と行わない条件を設けた。SAD患者は認知的再評価を行う場合でも行わない場合でも刺激に対してネガティブな感情を活性化させた。しかし、認知的再評価によってネガティブ感情を低下させることはできていた。認知的再評価により、扁桃体の活動は健常者では比較的早期に低下していたが、SAD患者ではより遅かった。扁桃体と外側前頭前野の機能的結合性は健常者では強い負の相関をしめしたが、SAD患者では機能的結合性が低下していた。この結果は、SADにおける認知的再評価の自己効力感とネガティブ感情と関連すると考えられる。

認知的再評価の脳機能画像研究はうつ病などでも行われるようになってきている。認知的再評価のプロセスについては、開始直後には感情を制御するが、それが遂行された後は制御状態を維持する過程に移行すると言われている。このプロセスは脳活動にも反映される可能性があり、それを検出するためにはEvent-related designの方が良いだろう。

2010年3月17日水曜日

サッカーの話:アーセナル

NHKの衛星放送でプレミアリーグを放送しているが、アーセナルの試合は必ず視聴する。最近は連勝しているが、相変わらず怪我人が多くキャプテンのセスクも今は怪我をしている。この間のハルとの試合でも欠場していたが、その時にディフェンスにソル・キャンベルが出場していた。ソル・キャンベルとは自分の誕生日が同じなのだが、それに関係無くソル・キャンベルは何故か気になる選手だ。顔も身体も典型的なディフェンダーという感じで非常にごつい。多分、数年前にウイニングイレブンにはまっていたときに恐ろしくパワーのあるディフェンスだった。スピードは遅いので俊足のフォワードには身体をぶつけられないとどうにもならないが。その試合でもスピードのある相手にかなり手を焼いていて思い切りファールをするしか相手を止められていなかった。彼は現在36歳らしいが正直プレミアリーグのレベルでやっていける選手とは思えなかった・・・。

うつ病の経過に伴う自己関連づけと前頭前皮質:パイロットスタディ

Lemogne C, Mayberg H, Bergouignan L, Volle E, Delaveau P, Lehéricy S, Allilaire JF, Fossati P. in press Self-referential processing and the prefrontal cortex over the course of depression: A pilot study Journal of Affective Disorders
うつ病は自己に焦点を当てた認知バイアスを示し、先行研究ではこの認知バイアスと関連してDorsal MPFCとDLPFCがうつ病患者においてユニークな脳活動として示されてきた。本研究では、これらの脳活動がうつ病の転帰に伴ってどのように変化するかを検討した。各8名のうつ病患者と健常者を対象に自己関連づけ課題を行い、6~14週間の間隔を空けてfMRI測定を行った。結果は、うつ病患者において時間経過に伴いDLPFCの活動が低下したが、Dorsal MPFCの活動は高いままであった。Dorsal MPFCの活動に変化が見られなかったことは抗うつ薬単独治療に特徴的な結果であり、認知行動療法による治療によってどのような変化が見られるかは検討するべきである。

ごく最近これまで蓄積してきた認知行動療法前後のfMRIデータを投稿したが、この論文の著者からそのデータについて質問とともにこの論文が送られてきた。

2010年3月16日火曜日

抑うつ症状と感情の認知的制御:fMRI研究

Beevers CG, Clasen P, Stice E, Schnyer D. 2010 Depression symptoms and cognitive control of emotion cues: a functional magnetic resonance imaging study Neuroscience. うつ病は認知的制御の低下が症状維持の一助となっている。この研究では、Happy, Sad, Neutralの表情刺激をスクリーンの左右どちらかに提示し、その後プローブが表情刺激と一致した場所か不一致の場所に表示された。被験者は、プローブが出た場所と一致したボタンを押すように求められた。この課題を実行している際にfMRIの計測を行った。32人の被験者は一般広告で集められ、抑うつ状態をCESDによって測定し、抑うつ高群と抑うつ低群に分けられた。結果は、表情刺激の位置と一致したプローブが提示されたときの脳活動に群間差は見られなかった。不一致の場合、抑うつ低群のVLPFCの活動は抑うつ高群よりも上昇していた。これは、抑うつが感情刺激に対する認知的制御に関わる脳機能を低下させている可能性を示唆する。

2010年3月12日金曜日

サッカーの話:バルセロナについて

スペインリーグのバルセロナは世界有数の強豪として知られている。先月のNumberというスポーツ雑誌を読んで知ったのだが、バルセロナの選手は一試合当たりのパスを受ける数とランニングの距離の比が他のチームと比べて圧倒的に少ないそうだ。これは、選手がとても効率よく走り、パスを受けていることを示している。それゆえに相手よりもスタミナを消費しないし、ボール支配率が高くなり、チャンスも多くなり、守備に回る時間も少なくなる。さらに、そのNumberの記事には続きがあり、サッカーでは常識なのだろうが、バルセロナの選手はボール保持者が常に2つ以上のパスコースを見つけられるように3人の選手が三角形を作ってパスをつないでいる。ただ、これ自体は他のチームでも変わらないセオリーなのだそうだ。バルセロナの場合、あえて相手がカバーしているエリアに飛び込んで三角形を作り、そこでパスを回しているために相手のマークがずれ、ゴール前でフリーになる選手が出てくるらしい。このようなことがわかったのも選手の走行距離や走った位置のデータ解析からだそうだ。バルセロナがなぜ強いかということについて、素人目には選手が良いとか戦術が優れているからとか色々と類推してしまう。憶測や類推ではなくデータに基づいて現象を説明したこの記事は素晴らしいと思った。

2010年3月11日木曜日

パニック障害の病因に対する現代の学習理論の見解

Bouton, Mineka, Barlow A modern learning theory perspective on the etiology of panic disorder. 2001 Psychological Review 108, 4-32

パニック障害に関する学習理論的説明はこの20年間様々なものが提唱されてきた。古くは古典的条件付けから始まり、批判に曝されながらオペラント条件付けによる説明なども行われてきた。筆者はパニック障害における恐怖の手がかりが環境に由来する外在的な手がかりだけでなく、内的な身体感覚を手がかりとして生じる可能性を論じている。条件刺激とパニック発作との連合は多様であり、本来異なるものである不安とパニック発作は交互作用し、条件刺激の連鎖の結果パニック発作が起こる場合もある。また、手がかりに対する認知や生物学的基盤がパニック発作を生じさせる脆弱性に関わると考えられる。
この論文はパニック障害の学習理論による理解を大きく進める重要なレビューである。認知行動療法を行う上での大切なClinical implicationも含まれている。

2010年3月10日水曜日

公開はじめ

とりあえず、ブログ作成。サッカーの話題が多くなりそうな気がする。研究について書くことはないので、サッカーについて。今年はサッカーワールドカップがある。日本代表も出場するが、かなり厳しいグループに入ってしまったと思う。しかし、自国開催以外であればどのグループでも日本にとって厳しいことには変わりないだろう。優勝候補は2008年の欧州選手権で優勝したスペインが有力視されている。個人的にはアーセナルが好きなので、セスク・ファブレガスが大活躍してほしい。彼のように90分間消えずにピッチを支配するミッドフィールダーは見ているだけで楽しい。しかし、今回は初のアフリカ大陸での開催ということもあり、予測しにくいだろう。いずれにしろ、ワールドカップ開催の時期は睡眠不足になりそうである。
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