2012年7月27日金曜日

不安障害と大うつ病性障害の自動性

Automaticirt in Anxiety Disorders and Major Depressive Disorder 2012 Clinical Psychology Review

本論文では不安障害とうつ病の自動的な認知過程の性質を検討した。自動性を統合された構成概念としてよりも、我々は自動性を4つの理論的に独立した特徴として議論した社会認知理論(Bargh 1994)に追随することにした。4つの特徴とは無意識(意識外の情動刺激の処理)、効率性(最小の注意資源による情動の処理)、無意図(情動処理において目的が必要とされない)、制御不可(情動刺激の処理の回避、変化、根絶する能力の制限) である。我々の文献のレビューではほとんどの不安障害は制御困難、無意識、無意図の脅威刺激バイアスの特徴がみられた。対照的に、うつ病はネガティブな情報処理の制御困難によってほとんど類型化されることが示唆された。不安障害とうつ病においては効率性に関して結論を下すだけの十分な根拠はないが、どちらも効率性によっては特徴づけられないことが示唆されている。これらの知見の臨床的、理論的示唆は将来の研究によって議論されるだろう。特に、より直接的に自動性の異なる特徴を表すパラダイムが、情動の制御障害における自動的処理の重要性を包括的かつ体系的な理解を得るために必要とされていることは明白である。

メタアナリシスでもしているのかと思ったがそうではなく、文献レビューだった。しかし、両者ともに情動の制御困難が共通しており、 自分の研究の方向性と一致する。認知の変容は認知の内容ではなく、アプローチの仕方を変えることが大事だと思う。

2012年7月25日水曜日

嫌悪事象の予期の分解は神経ネットワークの分離を明らかにする

Dissecting the Anticipation of Aversion Reveals Dissociable Neural Networks 2012 Cerebral Cortex

未来の嫌悪事象の予期は、準備メカニズムを駆動することによって適応的な利益をもたらすが、この過程は過度に働くと害にもなりうる。神経科学的な検討は予期を統合的な過程として扱っているが、本研究ではfMRIを用いて我々は分離した神経メカニズムによって支持される嫌悪事象の予期の別々のステージを示す。即時的な予期反応は、不安が高い被験者において脅威検出や手がかり刺激の早期過程と関連する眼窩前頭皮質や前帯状回尾側部、扁桃体といった領域と関連していた。持続的な予期活動は、分界条床核、島、前帯状回、中脳灰白質などの不安や、内受容感覚、防御行動に関連した領域と関連していた。前帯状回は中脳と機能的に結合しており、嫌悪事象の持続的な予期において恐怖反応の表出にこれらの回路が関与していることが示唆された。これらのデータは予期における異なる時間的なステージに異なる領域が関与することを示唆しており、人間の脳がどのように未来に適応的、もしくは非適応的に直面するかについての示唆を与えるものである。

2012年7月19日木曜日

精神医学における治療効果の脳機能画像研究:方法論的挑戦と推奨される方法

Functional neuroimaging of treatment effects in psychiatry: Methodological challenges and recommendations. 2012 The International Journal of Neuroscience

fMRIは、脳機能における症候と関連した異常を特定することによって精神障害や神経発達的障害の神経生理学的基盤を解明するために有用である。また、fMRIはうつ病や不安障害、統合失調症や自閉症などの精神障害や神経発達的障害に対する治療の作用機序に理解に大いに期待できる方法である。しかし、精神疾患における治療効果の検討にfMRIを使用することはfMRIを繰り返し測定することの性質や症状に対する介入の効果と特定の脳活動に対する治療効果の間の関連性をどう評価するか、そして脳機能に対する介入の効果について最も良い因果関係の推論をするにはどうすれば良いか、といった特殊な方法論的なポイントがある。加えて、神経発達的障害に対する治療効果の検討は、脳の成熟、解析手法、モーションによるノイズの可能性といったさらに特殊な問題をもたらす。我々はこれらの方法論的な問題のレビューとこれらのトピックに対する最も良い実践の推奨方法を提供する。

 ・複数回fMRIを行うことの問題
fMRIの再テスト信頼性は高いという報告と低いという報告がある。
・推奨される方法
マルチセンターMRIでMRI装置の特性を相殺すること。非臨床サンプルで再テスト信頼性を検証したのちに臨床サンプルで実施すること。

・fMRIで使用する認知課題の選択についての問題
今のところ治療効果を検討するためのGold standardな課題は存在しない
・推奨される方法
大規模なワーキンググループを作って様々な認知課題の信頼性や妥当性を検証すること。CNTRACSでは統合失調症を対象に認知課題の検証を重ねている。

・対照方法の選定の問題
検討したい介入の効果には、対照方法のデザインによって要求バイアスやプラセボ効果などの様々な剰余変数が混在してしまう。
・推奨される方法
ウェイティングリストやプラセボ、2種類以上の治療への無作為割り付けが最も望ましい。

・fMRIの定量性についての問題
fMRIの多くはBOLD信号を計測している、BOLDは脳活動の相対値であり絶対値ではない
・推奨される方法
時間分解能が気にならなければPerfusionやASLなどの撮像方法を用いるべき。

・治療と症候の関連についての問題
アスピリンによって筋肉痛は和らぐが、筋肉痛の原因はアスピリンの欠如ではない。これと同様に治療による症候の変化が病態や治療効果と直結しているとは限らない。
・ 推奨される方法
理論的な整合性と補強するデータを継続すること。また、治療によって完全に寛解した状態を対照群と比較することや特性の変化を調べるために脳活動が治療によって正常化した群と疾患のハイリスク群を比較すること。

・治療の効果と脳活動の変化の不一致の問題
 治療介入は全ての患者に有効ではないことを踏まえると、症状の改善がみられても脳活動に変化が無い場合やその逆の場合が起こりうることは留意すべきである。
・推奨される方法
十分に効果が実証されている治療介入を用いること。また、何の指標をもちいて主要な結果とするかを事前に考慮すること。

・治療反応の不均一性
治療効果は不均一であり、脳活動との関連を検討する上で問題がある。
・ 推奨される方法
サンプルサイズの問題はあるが、反応群と非反応群を比較すること。あるいは治療反応を連続量
として脳活動との関連を検討すること。

・fMRI課題のパフォーマンスに対する治療効果の問題
治療介入が課題のパフォーマンスに影響する場合、パフォーマンスを共変量に入れると脳活動への治療の影響を検出しにくくなる。
・推奨される方法
治療介入が課題のパフォーマンスに影響しないとみなされる場合は、共変量にパフォーマンスを入れること。

・過度なモーションの影響
基本的にBOLD信号の変化は課題よりも動きの影響を受けやすい。また、MRI装置内で静止することは患者にとって困難である。
・推奨される方法
バイトバーやフェイスマスクなど可能な拘束方法をとること。また、MRI装置のモックサンプルで慣れさせておくのも良い。

・治療効果に対する発達の影響
介入の効果や、課題のパフォーマンス、脳活動が乖離しているのと同様に、児童の場合は発達の問題も混在してしまう。
・推奨される方法
成人で検討したうえで児童に適用する。

・脳構造の違いについての問題
自閉症などの発達障害は健常人と比較して脳構造に違いがある。この違いは脳活動にも大きく影響する。
・推奨される方法
脳構造を標準化することが必要。

・児童の脳構造の問題
児童の脳は成人とは構造が異なる。このため成人の標準脳をテンプレートにすることに問題が生じる。
・推奨される方法
7歳以上では成人の標準脳で適切に標準化されるという報告もある。しかし、既存の児童の点標準脳のテンプレートを用いる方が適切である。

まあ、基本的な問題と解決方法である。別に治療介入に関する脳機能画像研究でなくてもほとんど共通する注意事項。きちんと覚えておく必要はあるが。

2012年7月18日水曜日

ボトムアップとトップダウンの感情生成:感情制御への示唆

Bottom-up and top-down emotion generation: implications for emotion regulation. 2012 Social Cognitive and Affective Neuroscience.
感情制御は適応的機能において重要な役割を持ち、蓄積された知見からは情動制御方略によっては他のものよりも有効であることが示唆されている。しかし、ボトムアップ(刺激の知覚的な特性に対する生得的な反応)とトップダウン(認知的評価に対する反応)の異なる情動生成の方略についてはほとんど注意がはらわれていない。プライミングの原則に基づいて、我々は情動制御のモードは情動制御に後続と交互作用すると予測した。特に、我々はトップダウンの情動生成はトップダウンの制御方略を用いる方がボトムアップの情動制御を行うよりも有効であると予測した。この仮説を検証するために、我々はボトムアップとトップダウンの情動を生成して被験者に認知的再評価によってその情動を低減するように教示した。我々はた情動反応の2つの尺度において生成と制御の予測された交互作用を見出した。自己報告の感情の測定ではボトムアップの情動の生成よりもトップダウンの情動生成においてより認知的再評価が成功した。神経活動は、ボトムアップ情動生成の認知的再評価は逆説的な扁桃体の活動増加がみられた。この高度作用は情動生成のモードと後続する情動制御の交互作用が情動制御の様々なタイプの効果を比較するときに考慮すべきであり、同様に異なる臨床的な障害に介入する時に認知的再評価を用いるときも同様に考慮すべきである。

情動反応が生じる過程によって情動制御方略の有効性が異なり、神経活動にも反映されるという個人的に大きなインパクトがある論文だった。恐怖のようなボトムアップの情動と反芻のようなトップダウン的に生成される情動では、効果的な情動制御方略が異なるのだろう。これは臨床場面においても重要な問題であると思うが、トップダウンの情動とボトムアップの情動を同列に扱うことは困難だとも考える。主観的な情動反応はトップダウンの方が大きいが、末梢の生理反応でも調べてみたいところ。

2012年7月14日土曜日

Voodoo的相関はいたるところにある-神経科学のみならず

Voodoo correlations are everywhere-Not only in Neuroscience. 2011 Perspectives on Psychological Science

Perspectives on Psychological Scienceにおいてある一点(voxel)で測定された脳の指標と行動尺度の誇張された相関に関するた最近の一連の論文は、尺度との相関を最大化するような選択の仕方に慎重になるように議論している。しかし、さらなる精査はこの問題は神経科学においてだけではなく、全ての研究パラダイムにおける広範な方法論的問題であることを空きrか兄した。研究者は相関がインフレするvoxelを選ぶだけではなく、刺激の選択や課題、条件の設定、従属変数や独立変数、治療、調整変数、媒介変数、など様々なパラメーターを同様に実証的データを見栄えを良くして安定させるために選択している。全般的に、パラダイムとは理想的でインフレ下効果を生み出すための常套的な設定として理解されうる。デザインの実現可能性は制限されるが、真実に迫るための修正は研究パラダイムを効果量を強く鮮明にすることから妥当性と科学的精査へと新しい方向付けをすることにある。

若干speculationに基く批判も含まれているが、実験デザインを考えるときに心がけておく必要のあることをいくつか学べた。

2012年7月11日水曜日

科学文献の検索:量的、質的レビューにおける示唆

Searching the scientific literature: implication for quantitative and qualitative reviews. 2012 Clinical Psychology Review
文献のレビューは研究の過程において不可欠なステップであり、全ての実証論文とレビュー論文に含まれているものである。電子データベースはこのような文献を集めるために広く用いられている。しかし、いくつかの要因は関連した文献が検索される範囲に影響を及ぼすことがあり、それは将来の研究や結論にも影響する。今回の研究は検索方略を計画する時に考慮すべき要因を示すためにあるひな形を用いて2つのアーカイブにおける検索方略によって得られた論文を検証した。特に論文の検索は、PsychINFOとPubMedにおいて双極性障害とADHDという障害を2つのひな形としてこれらの診断分類に関するレビュー論文に焦点を当てて行われた。論文は内容の関連性や特徴によってコーディングした。2つの検索エンジンからは全体的にも2つの障害によっても関連論文の割合が大きく異なっていた。関連論文において検索エンジン間のキーワードの違いが同定された。これらの結果に基いてレビュー論文のために文献を収集する際には複数の検索エンジンと構文と特定のエンジンの適正に応じた方略を用いることが推奨される。メタ分析と系統的レビューにおいては著者はレビューのために異なるアーカイブやソースの範囲を報告することを考慮した方が良いだろう。

検索エンジンごとに結果がかなり違うことは経験的には分かっていたが、データで示されると説得力がある。検索分野によってもかなり変わりそうだが。

2012年7月4日水曜日

大うつ病性障害患者の脳構造画像によるマルチセンター診断分類

この数十年の間にうつ病患者の脳構造の量的な異常が報告されてきた。しかし、これらの構造の違いは被験者間の分散を考慮して慣習的な放射線医学的に定義された異常における微妙な差異を示すのみである。結果的に、個人レベルにおいてうつ病患者を脳構造画像から同定することはできていない。近年、関連ベクターマシンやサポートベクターマシンなどの機械学習を個人の画像から分類を予測するために適用されている。そこで我々は新規のハイブリッドな技法を開発し、特徴抽出と特徴づけを一体化した機械学習を述べ、後者の特徴付けは機械学習による予測の精度を高めるためである。この方法は複数の施設から得たT1構造画像のデータで検証した。62人のうつ病患者と対照健常群をアバディーンとエジンバラからリクルートした。90%程度の高い精度の分類ができた。一方で特徴中週るが機械学習において精度を高めるために重要であったのにたいして、特徴付けは関連ベクターマシンによる分類の精度にわずかに貢献しただけであった。注目すべきことは、訓練時にうつ病と健常者という分類ラベルしか与えていないにもかかわらず、関連ベクターマシンとサポートベクターマシンの重みづけは主観的な症状の重症度と相関していた。これらの結果は機械学習によって個人の脳画像から正確な予測を行うことができる可能性を示唆した。さらに、機械学習の脳構造画像の情報をもとにした重みづけはうつ病の症状の重症度のバイオマーカーとなるだろう。

英語能力が低いせいもあるが読みづらい文章である。それはともかくとして機械学習で用いるweightが何かしら使える指標になりうる可能性が分かったのは良かった。ただ、やはり辺縁系はうつ病の分類においてあまり特徴として有用ではないことがこの論文からも示唆される。
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