2011年4月4日月曜日

再固定の更新機構を利用したヒトにおける恐怖の再現の妨害

Preventing the return of fear in humans using reconsolidation update mechanisms.
Schiller D, Monfils MH, Raio CM, Johnson DC, Ledoux JE, Phelps EA.
Nature. 2010 Jan 7;463(7277):49-53

近年の恐怖に関する研究は再固定(Reconsolidation)にターゲットが当てられている。再固定の最中には保存された情報が想起の後に変化しやすくなる。この段階での薬物の操作はのちに記憶の想起を出来無くさせるため記憶が削除もしくは恒久的抑制されることを示唆している。しかし、このような薬物の人体に対する使用は有害なために問題がある。本論文ではヒトにおける恐怖記憶の再固定に焦点を当てた非侵襲的な方法を紹介する。われわれは古い恐怖記憶は“再固定枠”の中で呈示された非恐怖記憶によって更新されうるというエビデンスを提示する。結果的に、恐怖反応はもはや表出されず、その効果は一年後まで持続しており、他の記憶に影響することなく恐怖記憶のみに選択的な影響があった。これらの知見は、感情に関する記憶を上書きするための機会としての再固定の適応的な役割を示唆しており、恐怖の再現を妨害するための人体にとって安全な非侵襲的な技術を示している。

1年前の論文でもありNatureではAbstractが日本語訳されているため、わざわざ載せる意味はないが、非常に興味深い論文だったので勉強のため読んだ。
不安障害に対する認知行動療法ではexposureによる恐怖条件付けの消去手続きを行う。臨床経験からは、exposureにより恐怖記憶を消去させるためにはexposureの際に恐怖がきちんと喚起される場面(CSとしての)にさらすことが必要だとされている。この論文は、このような臨床経験の理論的根拠になるものである。逆に再固定の際にCSを呈示しないような中途半端な消去手続きは恐怖記憶の単なる抑制であり、CSに再度曝されたときに恐怖の再現が起こることになり、治療失敗となると考えられる。

内容とは関係無いが、今日初めてこのブログの統計を見た。自分しかみていないという確信があったにもかかわらず、驚いたことに他の方からも見て頂いていた。
自分が興味を強く引かれた論文を忘れないように書いているだけのブログですが、よろしくお願いします。

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