2013年8月28日水曜日

OCDの治療プロセスにおける脳活動の非連続性:反復的なfMRIと自己報告の相反した結果


Discontinuous Patterns of Brain Activation in the Psychotherapy Process of Obsessive-Compulsive Disorder: Converging Results from Repeated fMRI and Daily Self-Reports  2013 Plos one

本研究では心理療法の過程における神経活動のパターンを検討した。インターネットベースのシステムで治療中の自己報告を収集した。dynamic complexityを時系列データの結果に適用した。変化の過程はdynamic complexityの変動によって示された。fMRIの反復測定は治療中も行われた。参加者は9名のOCD患者と健常者だった。症状を喚起するための課題は患者の個人的な対象から選んだ画像の提示であった。疾患と関連した神経活動は、一般的な不快画像と中性画像の時と比較した。治療と関連した脳活動(帯状回、DLPFC、島、頭頂葉など)において変化が現れる段階で見られた。この結果は、非固定的な変化が、自己組織化と治療的変化の複雑なモデルを支持する治療プロセスにおいて重要な役割を果たしていることを示している。

なぜこういう研究デザインになったのか何をやっているかよくわからないが、チャレンジングではある。
ぼちぼちやっていこう

2012年12月27日木曜日

"Mind the Trap":マインドフルネス訓練は認知的硬直性を低減する

"Mind the Trap": Maindfulness Practice Reduces Cognitive Rigidity 2012 PLoS one

2つの実験によってマインドフルネスと認知的硬直性の関連を、Einstellung water jar taskを用いて検討した。被験者は3つのつぼを用いて特定の量の水を得るように求められた。初期の問題は同一複雑な構えによって解くことができるが、後期の問題(クリティカルあるいは罠の問題)はさらにシンプルな構えを加えることによって解くことができる。硬直性のスコアは複雑な構えの耐久力を通して計算された。実験1ではマインドフルネスを受けた被験者はまだ瞑想訓練を受けていない被験者よりも硬直性のスコアが低減した。実験2ではWaiting-listとのRCTを行い、そこでは同様の結果が得られた、我々はマインドフルネス瞑想は体験によって盲目になる傾向を通して形成された認知的効力性を低減すると結論付けた。この結果は過去の体験によって新規で適応的な方法を見落としてしまう傾向を減らすというマインドフルネスの利得という観点から議論できる。

柔軟性は次の実験でやろうと思っている。が、なかなか課題に落とし込むのは難しい。fMRIを前提にするとなおさら。しかし、マインドフルネスは何でも効果があるように思うが、その背景にあるメカニズムはシンプルな気がする。回りくどい過程を飛ばして情動やそれを制御する認知によりダイレクトに影響しているのだろう。

2012年12月18日火曜日

不安障害とうつ病における脳機能と脳構造に対する心理療法と薬物療法の効果の違い

Difference between effects of psychological versus pharmacological treatments on functional and morphological brain alterations in anxiety disorders and major depressive disorder: A systematic review 2012 Neuroscience and Biobehavioral Reviews
最も一般的な精神障害である不安障害と気分障害は内側前頭前野や海馬、扁桃体といった恐怖回路を含む機能的、構造的な脳の変化と関連している。これらの患者は扁桃体の過敏性と前頭葉の機能減少を示す。しかし、これらの脳の異常が治療によって低減するのかはいまだに明らかでない。このレビューは、これらの疾患における機能的、構造的な脳の指標に対する心理療法と薬物療法の効果を比較する。63の研究において、30が心理療法の効果を検討しており、33が薬物療法の効果を検討している。方法論的な違いはあるが、結果からは恐怖回路の機能的な正常化が示唆された。薬物療法は辺縁系の過活動を特に低減させるボトムアップ効果があり、心理療法は前頭皮質の特に前帯状回の活動を高めるトップダウン効果が示された。加えて、薬物療法のみ構造的な変化が伴っていた。これらの知見は、これらの治療法が異なる経路で脳の異常を正常化することを示唆している。

ざっくりしたレビューっだが、そのうちメタ分析が行われてデータから物が言えるようになることを期待している。自分でやっても良いが。

2012年11月28日水曜日

マインドフルネス:トップダウンの情動制御かボトムアップの情動制御か?

Mindfulness: Top-down or bottom-up emotion regulation strategy? 2012 Clinical Psychology Review

マインドフルネスの臨床的に有用な効果は実証的検証の指示が増えつつある。しかし、マインドフルネスの効果の背景にある神経メカニズムは完全に検証されてはいない。幾人かの著者はマインドフルネスをトップダウンの情動制御方略と記述するべきであると提案しているが、他にはボトムアップの情動制御方略と記述するべきであると提案している。この乖離はマインドフルネスの記述と適用方法の多様さに由来する。本レビューではマインドフルネスの現在のマインドフルネスの記述と、マインドフルネスと従来の情動制御方略との関係性を議論することが目的である。近年の情動制御の文脈でマインドフルネスを検討した脳機能画像研究からの結果が呈示されている。我々はマインドフルネスは短期間のトレーニングではトップダウンの情動制御と関連しており、長期間のトレーニングではボトムアップの情動制御と関連していると提案する.現在のエビデンスの限界と将来の研究についての提案議論する。

英語ネイティブが書いたもので内政か、英語が言葉足らずな気がする論文。認知療法学会でマインドフルネスの事例発表をされていた方との議論になった点がテーマになっていたので良かった.とはいえ、この点に関しては実証的な実験が少ない。

2012年11月22日木曜日

認知行動療法は全般性不安障害における恐怖の連合を解消する


Cognitive-behavior therapy resolves implicit fear associations in generalized anxiety disorder 2012 Behaviour Research and Therapy


認知スキーマ理論は不安障害は記憶と恐怖の連合と関連していると仮定する。全般生不安障害においてネガティブな心配語(例:癌)に対する潜在的なネガティブ評価を示すだけでなく、中性語(例:診断)においてもその影響が汎化することが示されている。本研究は、精神病理学的な記憶構造の指標として理解されているこのバイアスのCBTに対する感受性を評価した.extrinsic affective simon taskを用いて、全般性不安障害患者23名と健常者25名を対象に中性語とネガティブ心配語の特質との潜在的連合を測定した.患者はCBT前後にテストを行い、患者の半分は治療待機中に追加でテストを行った.臨床症状は治療前後と6ヶ月後のフォローアップで測定した。CBTは中性語に対するバイアスを正常化し、このバイアスの治療中の減少は6ヶ月後のフォローアップにおける症状の改善を予測した.さらに、治療前のバイアスはCBTに対する反応性を予測し、低いバイアスは治療集結に置ける短期的な症状の改善を予測し、高いバイアスは6ヶ月後の遅延した治療効果を予測した.中性ターゲットに対する潜在的な評価バイアスは、GADの永続的な脆弱性因子を示さなかったが、状態としての不安のレベルの高まりと関連していた.さらに、このバイアスの正常化はCBTの治療機序におけるきわめて重要な要因であることが示された.

extrinsic affective simon taskはプログラムが公開されているようだが、ダウンロードしても起動しなかった…。

2012年11月19日月曜日

感情を言葉にする:曝露療法に対する言語の寄与

多くの研究が情動にラベル付けすること、感情を言葉にすることが認知的再評価や気ぞらしのような情動制御方略の形式で情動を下降制御するために有用であることを明らかにしている。我々はこの基礎研究の知見を、クモ恐怖の曝露場面という実際の臨床場面に適用した.群間比較デザインを用いて、我々は曝露中の恐怖刺激に対する情動のラベル付け、認知的再評価、気ぞらし 、曝露のみの効果を比較した。1週間後のポストテストは異なるクモの刺激を違う文脈で呈示した。情動のラベル付けの群はSCRの減少が他の群と比較してみられ、気ぞらしよりも接近行動が見られた。しかし、主観的な恐怖は他の群と比較して異なることは無かった.加えて、曝露に置ける恐怖や不安の使用頻度は恐怖反応の低減と関連していた.よって、驚くべきことに情動のラベル付けは臨床の文脈においても情動の制御の助けとなるであろうことが示された.

情動のラベル付けによるSCRの低減が大きすぎる気がするが。とはいえ、CBTの効果は認知的再評価のような複雑な要素だけではなく、セルフモニタリングや面接を通してネガティブ情動を言語化するというごくシンプルな要素もあるということか。情動を言語化するというプロセスが情動記憶をどのように変容させるのか解明されると良いと思う.

2012年11月2日金曜日

全般性不安障害とパニック障害の情動制御遂行中の前頭皮質機能障害

Prefrontal dysfunction during emotion regulation in generalized anxiety and panic disorders. 2012 Psychological Medicine
不安障害における情動の制御障害のメカニズムはほとんど理解されていない。そこで、GADとPDにおいて情動制御遂行中の前頭皮質が不活性であることによって特徴づけられるという仮説を検証した。競合する仮説としてGADでは逆に前頭皮質が過活動であるという仮説も検証した。これは過剰なトップダウン制御を反映している。
22に人の健常者、23人のGAD患者、18人のPD患者はネガティブ画像に対する認知的再評価と維持を要求される課題を行い、fMRIの測定を行った。
GAD患者は日常生活におけるに認知的再評価の使用が最小であることが報告され、それは不安症状と機能的障害と負の相関を示した。fMRIの測定の結果から、健常者は認知的再評価と維持のいてどちらも患者らよりも前頭皮質の高い活動を示した。さらに、不安障害の患者では認知的再評価における外側前頭皮質と内側前頭皮質の活動は不安症状と機能的障害と負の相関を示した。GADとPDにおける情動制御障害は前頭皮質の活動低下の結果によってもたらされ、それはトップダウン制御の不足と一致する。前頭皮質と機能障害の相関は、情動制御における前頭皮質の失敗が高不安から不安障害への変遷の一部であることを示唆している。

自分の仮説を指示する研究だが、先を越された感は否めない。
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