2010年4月23日金曜日

統合失調症に対する心理的介入

キングトンやエマ・ウィリアムスの統合失調症の本を立て続けに読んだ。RCTのメタ解析からは結局のところ、研究のセレクションの仕方によって効果があるとも効果が無いとも両方の結果が出るようである。根本的な問題は、統合失調症の病態メカニズムが心理的にも生物学的にも解明されていないために、包括的な治療方法が開発されていないためではないだろうか。統合失調症が認知機能障害によって幻覚や妄想が生じるというがそれらは陽性症状のみであり、より深刻な問題は陰性症状だと思う。陰性症状は活動レベルや思考機能を大きく障害する。陰性症状への心理的介入方法はまだ十分に検討されていないようだが、この問題が解決することと機能障害を補償するスキルの獲得により社会復帰支援も進むのではないかと期待している。
当面実行可能なことはストレスマネージメントと心理教育だろう。どちらも日常生活上で必要であり、役立つと思う。
また、認知機能リハビリテーションはデザインに優れた効果研究が少ないため、効果について大きな期待はできない。恐らく、元々知的レベルが標準以上の患者にまず適応した方が良いのではないか。
いずれにしろ、リハビリテーションが可能かどうかすらアセスメントすることに問題が山積である。
できればなるべく焦点を絞り、拡散して目的や方法が漠然としないようにしたい。

2010年4月15日木曜日

精神病性障害における再発、症状、知識、治療遵守、機能に対する心理教育の有効性:メタ解析

Lincoln et al 2007 Effectiveness of psychoeducation for relapse, symptoms, knouledge, sdherence and functioning in psychotic disorders: A meta-analysis Shizophrenia Research 96, 232-245.
統合失調症に対する心理教育は広く適用されているものの、その効果の検証は不十分である。統合失調症の心理教育的介入は患者の家族を含めたっばいに有効であることがメタ解析によって示されている。だが、患者のみを対象とした心理教育の有効性は分かっていない。このメタ解析は短期及び長期の心理教育プログラムについて家族を含めた場合と含めない場合の効果を検証した。
RCTによる効果研究を解析に含めた。方法論、被験者、介入、妥当性によってコーディングを行った。効果サイズは固定効果モデルを用いて均質効果を算出し、ランダム効果モデルを用いて不均質効果を求めた。
 治療のモダリティと独立して、心理教育は再発に対して中程度の有効性を持ち、知識に関してはわずかな効果サイズが見られた。心理教育は症状、機能、治療遵守には有効でなかった。再発と再入院に関しては治療後12ヶ月は有効であったが、それ以上の期間では有効性を示せなかった。家族を含めた心理教育は治療直後及び7-12ヶ月後のフォローアップ時に症状改善に有効だった。患者のみを対象に下心理教育の有効性は示せなかった。

2010年4月4日日曜日

デイケアでの役割

・デイケアの各グループにおけるミーティング
 ・議論の方向性を整理し、方向付ける
 ・心理教育が可能なテーマには積極的に介入する
・認知リハビリテーション
 ・素材を整理して使用可能な素材のリストを作る
 ・プログラムの概要について聞く

2010年4月2日金曜日

病院での方針

・デイケアに参加
・なるべくCBTが役立ちそうなところへ
・デイケアの内容について、スタッフがどのような動きをしているか記録する
・就労支援と復職支援に積極的に参加できるようにする
・心理検査
・復職支援にて必要
・大きな目的
・認知機能リハビリテーションの計画作成をサポート
・病院の大きな方針である、患者を入院から外来、社会復帰へと繋ぐに当たってデイケアで何を担当し、何を行い、何を変えるかを明確にすること

2010年3月31日水曜日

今後の計画

今日が大学院最後の日である。とはいえ、これからもやっていくことに大きな変化があるわけでもない。今後の方針としては、感情制御の基礎研究を細々と行っていく。来年度は感情制御の基礎検討として生理指標を用いた実験とパニック障害の病態検討のためのfMRI研究を行う計画である。このうち一つでも何か論文にできれば尚良いが。いずれにしろ、丸4年かかったが無事修了できて良かった。あっという間というわけでもなく、振り返れば様々なことがあったが何とか乗り切ったという感じだ。年月は経って行くが、環境の変化に対応しながら自分のできることをやり続けられるようにしたい。

2010年3月26日金曜日

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediationについて

Neuropsychological Educational Approach to Cognitive Remediation(NEAR)を今勤めている病院で計画している。日本語の本を買って読んでみたが、基本的にリハビリテーションの内容は患者に合わせて雑多なものを使用するというスタンスのようなので、同じNEARといってもやっていることは場合によって異なると思われる。認知行動療法的に考えれば、認知機能について機能分析をした上で、問題点に対してそれぞれ有効な技法を組み合わせて実行すると言ったところだろう。しかし、問題はリハビリテーションの具体的な内容がコンピュータープログラムで行われていると言う点である。児童や学生の教育用のプログラムは日本でもあるが、それらが認知機能にどのように有効かは分からないので、患者の認知機能の障害が評価できてもそれにあったプログラムを使えるだろうか?できれば既にNEARを施行している施設に質問したいと思う。

2010年3月22日月曜日

感情に焦点を当てる:マインドフルネスは悲しみの神経表出を変える

Farb NA, Anderson AK, Mayberg H, Bean J, McKeon D, Segal ZV. 2010 Minding one's emotions: mindfulness training alters the neural expression of sadness. Emotion. 2010 Feb;10(1):25-33.

ネガティブな感情を和らげ、耐性を増すことはメンタルヘルスの特徴である。マインドフルネストレーニング(MT)はそのような結果をも足らずものの、作用機序は殆ど知られていない。本研究では、fMRIを用いて8週間のMTを受けた群と待機群の悲しみ気分の誘導と関連した神経活動を比較した。悲しみ気分は自己関連づけと関連した脳領域広範の活動をもたらした。主観的評価が等しかったにもかかわらず、MT群は耐性感覚野の活動が増加した。これらの領域の活動は、抑うつ症状の減少と関連していた。

マインドフルネスはあまりよく知らないが、その理由は作用機序が不明瞭で了解できない部分が多いからだろう。このような神経活動から作用機序を検討する試みが進んでいけば、作用機序が明確になって理解ができるようになるかもしれない。
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